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2014.08.03 (Sun)

『Laplace』 Part.4 -My End- 文章&挿絵サンプル3

『Laplace』 Part.4 -My End-の文章&挿絵サンプルその3になります。
本内容は展開が無難でなく、少々のネタバレを含むものとなっております。
承知の上で続きからお願いします。

【More・・・】





 私は腰を浮かせてまどかの腿と肩に自らのそれをぴったりと寄せるようにし、まどかの手から携帯を離させる。自分で自分を可愛いだのと感じたことはただの一度たりともないのだが、幸いなことに、私がどのように振る舞えばまどかが喜んでくれるのかはある程度理解している。
「一緒に、どう?」
 案の定、少し緊張した様子の彼女はそれでも何とか頷きを返し、両手を膝の上に揃えるのだ。それを認めた私は頭を彼女の肩口に預け、昔はよくこうしながら母に読んでもらっていたものだが、格好はともあれ今から朗読を披露するのは私なのである。似ているようでどこか少し違う、まどかと共にするこのちぐはぐな一幕に些細なくすぐったさを覚えながら、私は物語を読み始めた。
「むかしむかし、あるところに……」
 思うと、私の声は母のそれに少し似て来たところがあるかもしれない。日常を何気なく過ごしているだけではそのようなことを感じたことは一度もないのだが、いざこうしてまどかに聞かせる段となると、かつての母の発声を見本とした響きをイメージする訳だが、私の記憶が薄れているのか、あるいは本当に近しいものがあるのか、思った以上に私は自らの思い出その深くに眠っている宝ものを上手く掘り返すことが出来ている。
「やがて、お姫様の目の前には闇の魔女が現れます……」
 そういえば昔の私は、魔女がどうしてこの姫君や人々にひどい仕打ちをするのかと訊ねたことがあった。あの時の私は母の寄越した回答に、どこか釈然としない大人のずるさのようなものを感じていたように思うが、案外にその時にもらった答えというものは、当たらずとも遠からずといったところを射ていたようにも思う。
 母は当時こう述べた。
 「悪いことをする人がいたから、物語の主役たる姫君にはこれを正すための仕事が与えられた。悪いことがなくては、対価として発生し得るいいこともきっと起こり得ないのだ」――と。
 確かに、物語というものは読者を楽しませるために、時には真実の他にも、様々な要素を含めた工夫を盛り込んでこれを構築せねばならない。当時母がいっていたのは、やはりこの多様な考え方に基づく部分のことであったろうし、今の私
としても、これについてはある一定の納得をすることが出来る。
 とまれ、私の語る姫君は、巡り巡る幾つもの希望と絶望を乗り越えやがて終局を迎える。
 そこで彼女は城に戻ってかつての生活を送るという安定的な選択を放棄し、何ら特別な富や名声があるでもないごく平凡な木こりの青年と結ばれ、満面の笑みを浮かべる二人の面が描かれたところで話が閉じられている。
「めでたし、めでたし」
 読み終え、ふと唐突に、劇中においてこの姫君が希望の対価として得たはずの絶望はどこへ向かったものだろうかという考えが浮かび、これについて一考をしてみるものだが、例えばそれは彼女が不在となって混乱を来したであろう城内の制度であったり、彼女が己の道をゆくために排斥されることとなった龍や魔女であったり、事後的なことまで含めてもいいのであれば、あるいはこの物語のあとにも様々な艱難辛苦が彼女を待ち受けていたに違いない。
 大変だったろうな、私ならどうしていただろうかと、私は少時童心に立ち返り、この物語について大真面目に悩むことをしていたのだが、そういえば私はまどかに読み聞かせることをしていたのである。最後のページを開いたままに固まったままの私を果たして彼女はどのように見るのであろうか。
 何か声を掛けようかとも思ったものだが、どうにも話題が出て来ない。場を濁すようにゆっくりと本を閉じると、そこでようやくまどかが口を開いた。
「何だかこのお姫様、ほむらちゃんにそっくりだね」
「私に……?」
「うん、ほむらちゃんに」
 まるでそのような観点からの思考をしていなかったものだから、私は思わず面食らうような格好となる。確かに昔の私は、城に閉じ込められていた姫君を病院で自由の利かない自身へと重ね合わせ、そこから飛び出し様々な冒険を繰り広げる彼女へと憧れこそ抱いていたものの、こんなにも充実した彼女に私が相似しているだなんてことは、今まで一度たりとも考えたことがなかった。
「ただあるもの、あるところでじっと過ごすんじゃなくて、自分が望む未来とか人生とか、そういうもののために必死になって頑張りながら走り続ける、そういうところがほむらちゃんにそっくり」

3


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