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2013.07.19 (Fri)

『Laplace』 Part.1 -Past Days- 文章サンプル6

『Laplace』 Part.1 -Past Days-の文章サンプルその6になります。

【More・・・】





   ***

 出席日数が危ういと思っていたものですが、あるいはこんな私がこれ以上在学したとてよい材料など何もないと、先生がどうにか捩じ込んでくれたのかもしれません。また、学校に出られない時でも自宅学習をしておき、ある程度は授業に着いていけるようにしていたのも幸いしたのでしょう。
 そうした紆余曲折を経て、私は中学に上がることが出来ました。
 いえ、実際にはそんな、体調の不良に纏わる事由以外にはこれといって特筆すべきことがなかったのですけどね。ストレートに卒業を出来たのは奇跡という他にない気がしますが、こんなことをいってしまっては奇跡という言葉が安っぽくなってしまっていけないでしょうか。
 とにかく世の制度上で私は無事に進学を果たし、両親をはじめとした周囲もこれを祝ってくれたものですが、肝心の身体の方は調子もほとんど据え置きといった態で、決定的なまでに悪くなることもそうなかったのですが、だからといって自信を持って改善したのだといえる程にも目立った変化は得られませんでした。すなわち周囲と比較し、相対的には何ら変化のない低空飛行を続けていたということになります。
 そんなものですから中学校も休みがちになります。六年前にはデビューを果たそうと躍起になっていた自分もいた気がしますが、事ここに至っては悟りの境地です。
 入学式は生徒らが一堂に会するため、私としては貧血で倒れる可能性が高いものですからパスをしましたし、授業の出席についてもやはりそれなりなものです。
 私の事情については予め学校側に伝えてありますから、先生からは特例だということで留年をしないための最低限の出席日数を伝えられてあります。まるで話に聞く、単位制の大学生か何かのようですね。私は年間を通しての基本的な授業計画と、不測の事態に備えたリスクを換算しながら、各月、各週の登校予定を立てていきました。
 私を変わらず心配してくれる両親も、私が本当に小さかった頃に比べると多少の老いを感じるようになって来ました。母は顔に小皺が目立つようになりましたし、父はお腹が少し出るようになったかもしれません。止まっているようで、何もかもが少しずつ動いているのだなと、時の流れに切なさと喜びを噛み締めながら日々を過ごしていると、ある日に事件が発生したのです。
 どうしてでしょうか、もうそんな年頃でもないというのに寝て起きてみるとショーツがぺっとりとしているのです。やってしまったかなと思いながら毛布を捲り上げてみると、股の中心に当たる部分が赤く染みています。
 まさかと思いながら生地をずり下げてみると、そこにはおおよそ想定していた通りの光景が広がっており、知識として備えてはいたのですが、こんなに不完全な身体にしても訪れるものなんだなと驚きを感じた反面、私みたいなものでも生物としての理、そのレール上にしっかりと乗れていたのだという実感に心を強く勇気付けられた気がしたのです。
「お母さん、ちょっと……」
 そういえば、小学校までの私は母のことをママと呼んでいましたが、最近はお母さんと呼ぶようになりました。父のこともお父さんです。いつまで経ってもパパママで通す人もいますが、どうにも私はその発音が恥ずかしく感じるようになり、ある日を境にして方針を宣言しては切り換えた形です。
「どうしたの? ほむらちゃん」
 洗濯物を畳んでいた母は手を休め、神妙な雰囲気であった私の態度に何かしら感じるところがあったのかもしれません。
 不測の自体が発生した場合はその旨を確実に、遅滞なく伝えるように約束をしているのですが、私としても大概のことをそろそろ一人で出来るようになって来ました。こうして不調以外の点についていかにも相談事がありますといった態の空気を出すことは、この頃の私としては珍しいことであったように思います。
 父は会社に出勤しているため不在なのですが、どうにも恥ずかしい私は母を手招きして耳に口を添えて内緒話の風に、つい今さっき我が身に訪れた変調を伝えます。
「まあ」
 やはり母は驚き、申し訳なさそうに私に断ってから肝心の部分をさっと確認するようにします。いくら相手が母であるとはいえ気恥ずかしさでどうにかなりそうでしたが、何分初めてのことであったため、先達である母の知見を伺うことこそが肝要であると思いました。
 次いで母は私が寝ていたシーツの確認をし、どのような観点でして何を確認しているのかは定かではないのですが、きっとそれは必要なことなのでしょう。
「痛くはない?」
「うん、大丈夫」
「身体がだるいとかそういうのはある?」
「何となくふわふわする感じがするけど……寝起きだからよく分からない」
「そう、そうよね……じゃあほむらちゃん、少しシャワーを浴びてらっしゃい。そのままじゃ気持ち悪いでしょ?」
「え、でも」
「いいから」
 軽く混乱をしてしまっている私を母は急かすようにし、その勢いに圧されるままバスルームに押し込められるような形となってしまいました。
「着替えはここに置いておくからね」
 曇りガラスの向こう側からぼんやりとした声が聞こえて来ます。仕方がなく承知した旨を返し、私は身体を冷やさぬよう湯を浴び始めました。
 少し熱めのシャワーを頭から被りながら息を整えていると、次第に水の弾ける音も中空に溶けていきます。色々と思うところはあるのですが、自身の鼓動が鳴らすリズムを継続的に感じ取ることをし、一先ずは余計なことを頭から切り離すのです。
 暫時をそうしたのち、浴びる熱の爽快感にうしろ髪を引かれるようにしながらも、煙の世界から脱したその先には替えの下着と部屋着。母が用意してくれたそれらを身に纏ってからリビングへと向かいました。
「上がったよ」
 向かった先では母が幾つかのパッケージを床に広げており、何だろうと表面のラベルを確かめてみると――ああ、やっぱりそうですよね。それらは母が買い置きをしている生理用品であるようでした。
「あら、早かったのね。もう少しゆっくりしていてもよかったのに」
 そうはいっても、特段に用がある訳でもないのに無為に時間を潰すことも簡単ではありません。それに、ある種このような展開になるであろうことは流石の私にも予想がついていたものです。先延ばしにすることもない。
 私は、母が説明を始める前に自分の身体に何が起こっているのかそれ自体は理解していることを伝え、それを前提に話を進めてもらうようにお願いしました。さっきからこっち、どうにも気恥ずかしさが先立つものですから、なるべく事務的につつがなく終わらせたいという思いがあったのです。
 たどたどしい説明になったものですが、どうやら母は私の意図を汲んでくれたらしく、さっとそれぞれの用品の使い方、周期の数え方や備え方、その他注意すべき事項を一通り伝えきり、やがて満面の笑みでこういうのです。
「おめでとう。ほむらちゃんも大きくなったのね」
 こういう時にはどんな顔をすればいいのでしょうか。私はどうにも上手く振る舞うことが出来ずに、ただただ赤くなって俯いてばかりいたと思います。
 特段に体調が悪いということはなかったのですが、何分初めてのことでしたし、勝手が分からないのも事実です。母から勧められるままにその日は学校を休むこととして、自宅学習とネットサーフィンをして時間を潰していました。
 それにしてもインターネットというものは本当に便利だと思います。母には面と向かって聞くことが出来ないような質問でも、この機能を使うことで何でも気軽に調べることが出来るのですから。
 私は、私のように初めてを迎えた時の人の言葉を参考にしようとそれらしい単語で検索を行ったのですが、思っていた以上の情報があっという間に集まりました。さらに掘り下げて見ると、母に勧められた用品のプロダクトページや、その商品に対する世間一般の評価やレビューまでもが掲載されています。質はあまり上等なものではないようなのですが、安さが売りというのが広範な認識であるようです。
 口コミの力というものは偉大なもので、それ以外を知らないはずの私がまるで熟練の使用者になってしまったかのような気分です。いずれ自分で買いにいくことにもなるでしょう。その時はこれらの情報を参考にして、色々なものを選んでみようかと思います。
 かつて少女だった彼女らの生の声に没頭していると、時間の方は瞬く間に過ぎていたようでした。私の主観ではついさっき昼食を終えたばかりかと思っていたのに、気付くと、おそらく父のものでしょう。玄関を開けるような音が伝わり、母のものよりも少し豪快な足音が廊下に木霊します。
「ほむらちゃん、ご飯よ」
「はあい」
 父はいつも腹ぺこで帰って来るものですから、帰宅後すぐに晩御飯とするのが我が家の習慣となっていました。私個人のものということで所持させてもらっていますし、まさか見られるということはないのでしょうけど、万が一のことを考えて私はブラウザの履歴を消去し、パソコンの電源を落としました。足早に食卓へと向かいます。



(本文サンプル6 了)


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テーマ : 魔法少女まどか☆マギカ ジャンル : アニメ・コミック

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