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2011.08.12 (Fri)

ロロナちゃんとのこと

お待たせしました。メルルのアトリエからメルルちゃんとロリナ先生のお話となります。
内容的にはロリナ先生の幼女パゥワーにやられて人間的にダメな具合になってしまうメルルちゃんを書きたいなあよし書こう! といった軽いノリで書き出しまして、やはりそういう感じの中身になっていると思います。

【尚、久しく年齢制限ありの作品となっております。18歳未満の方はご覧になりませんよう、お願い致します】

タイトルは『ロロナちゃんとのこと』となります。
前後編でやろうと思っていましたが細かく分割して更新していくことにしました。
Piece.numberっていう感じでやっていきますのでよろしくお願いします。

イントロパート更新しました。(8/12)
字数的には5000字そこそことなっておりまして、一息で読める程度のものかと思います。
現時点ではそんなに過剰な描写をしていませんが、今後ではあまり一般的ではなさそうな趣向も存分に凝らして自由にやっていく予定でございます。お含みおきください。

Piece.1パート更新しました。(8/19)
『「メルルちゃんお出かけするの? それじゃあロロナも一緒に行くー!」』からが当該パートです。イントロを既読の方はCtrl+Fと共にご活用ください。
字数的には5000字少々の加筆となっております。
キリがいいもんで、何時もより少なめの字数、スパンですがアップをさせてもらいました。
Pieceはどこまで伸びるか分かりませんが、おそらく全体量としては3~4万字くらいの文量で見ております。よろしくお願いします。

Piece.2パート更新しました。(8/26)
『採取に訪れてから三日目の夜、』からが当該パートです。以前までの分を既読の方はCtrl+Fと共にご活用ください。
字数的には11000字程の加筆となっております。イントロから含めた全体としては21000字程の文量です。
本パートからは割とガッツリそういう描写がございますので、念のため何かの間違いでここに迷われてしまった想定外の方は回避をお願い致します。
大きな予定変更がなければ次回のPiece.3で完結することとなります。よろしくお願いします。

Piece.3パート更新しました。(9/10)
『「メルルちゃん、ロロナ、何だかドキドキしてきたよ……」』からが当該パートです。ていうか何ですか、この時点で既にアレですね 謎
以前までの分を既読の方はCtrl+Fと共にご活用ください。
字数的には17000字強の加筆となっております。全パート含めますと38000字強の文量です。
あとその、くれぐれもいっておきますが、何か間違えてしまったロロナちゃんがおもらしとかをしちゃいますのでそういうのが嫌な方は回避をお願いします。どんどんと門戸が狭くなっていきます。仕方がありませんね!


では長々と失礼をしました。続きから本編となっております。
どうぞごゆるりとお楽しみ頂ければと思います。

【More・・・】





「メルルちゃん、ロロナ、何だか変な感じがするよ……」

 現実の話をしようと思う。
 こう見えてアールズ国の姫たる私こと、メルルリンス・レーデ・アールズの、ともすれば先数十年という人生をも変え得るかもしれない砌というやつは、果たして今この瞬間に訪れているのかもしれない。
 目の前には世の極楽、正しく夢見心地といった風を堪能するかのようにまん丸い頬を紅潮させたロロナちゃんがおり、その背後に控える私の手の内には石鹸を馴染ませ泡立つタオルが握られている。私たちはたとえ髪飾りの一つにしても身に着けず、共に一糸纏わぬ姿にて、心地のよい湯の熱と泡の感触とに興じているのだ。
 私たちが入るからと入浴の用意をしてくれたケイナも、今や城内の清掃やら何やら諸業務に取り掛かっていることだろうと思う。厚い壁面に外と内とを隔たれたこちら石敷きの間には私とロロナちゃん以外の何者の姿もない。
 そう、たったそれだけのこと。何ということはないのだ。
 今までも私はロロナちゃんにおねだりをされては調合の合間を見、こうして一緒に背中の流しっこをしたり、あるいは目に泡が入るから嫌なのだと駄々をこねる彼女の頭を洗ってあげたりと、まさに今のようなことだ。こういうやり取りをすることはしばしばあった。
 その、きめの細かな肌に触れることは私も好きであったし、何よりロロナちゃんのお願いとあっては人としてやってはいけない類の、そんな悪的な事柄以外であれば聞いてあげたくなってしまうのが人情というやつなのであって、こればっかりは仕方がない。彼女はとても可愛らしく、私の為すこと一つで微笑んでくれるのならとついつい甘やかしてしまう。
 ともあれそうなのだ。私たちが行うべくは斯様な、まるで仲のよい姉妹のような、あくまでその範疇で収まらなくてはならない。年端もいかぬロロナちゃんの愛らしいお願いに対して、仕方がないなあといった具合に余裕で以て応じることこそが姉たる私が為すべきことなのであり、また、逸脱してはならない絶対的な線引きなのである。
 そうだ、私はしっかりと理解している。何がよくて、何が悪くて、やっていいことと悪いことの境目というやつを私はしっかりと把握している。
 だとしたらば簡単だ。果たして今の私はどうなのかと、もう一度自らの心に問うてみる。
「はぁ……」
 歳不相応に艶の混じる吐息を漏らすロロナちゃんが潤んだ目で振り返っては私を見上げるその様は、しかし何たる凄艶さ、その加減であろうか。
 目の細かなタオルにしても稀に痛む素振りを見せる彼女の前側を洗ってあげるためにと、先日からこうして直接、石鹸を塗した手で以て撫でやるようにしてあげている私なのだが、ただここで誤解しないでほしいのは、あくまでこれを望んだのは他でもないロロナちゃんなのであって――まあ、前くらいは自分で、といいつつもついつい押し切られてしまった私ではあるのだが――甘えが過ぎるような気がしつつも退けられず、結局はその我侭に応えてしまった次第なのである。
「メルルちゃん、メルルちゃん……」
 そうして、その果てがこれだ。
 私の視線と心とを捉えて止まない面をそのままに、小さなお口を開いてはまるでうわ言のようにメルル、メルルと、私の名前を呼ぶこの癖には覚えがある。こういう時のロロナちゃんというやつは、
「んー」
 ああ、やっぱりそうだ。先日からそうなのだが、ロロナちゃん曰くところの『変な感じがする』時に私へと口付けをせがむことが近頃の彼女にとってはいたくお気に入りの連携であるらしく、これを断ってしまってはその後にとても悲しそうな目で私を見つめることについても、私は既に経験済みなのである。
 だから、そうなんだ。
「ん……」
 こうやって私が、こんな小さな子の身体に触れながら唇を合わせることも仕方がない業なのであって、だって、そうしなくては彼女が悲しんでしまう。ロロナちゃんを泣かせることは他の何事にも代え難く、間違いなく、それは私曰くところの悪的なことなのだから。
「ん、む、ん……」
 加えて、そう。逆をいうならば一日の汗を流すという行為は、身体に纏わりつく不快感を洗い落としては綺麗さっぱりとした爽快感、あるいは読んで含まれる字の如く快感を追及するという、そのような意味合いを帯びたものに違いなく、故に私はロロナちゃんが夜の時間を心地よく送ることが出来るようにと、その一心にて彼女のお手伝いをしているに過ぎない。
 そう、たったそれだけのことに過ぎないのだ。
「ん、う……ぷはっ」
 他方を案じていたせいか、石鹸で覚束ない手元にて彼女の先を捏ね繰り回していた私は勢い余って指先を滑らせてしまい、それによって生じた摩擦と圧感とに身を震わせたロロナちゃんが、弾みで私との結合を解いてしまった。
「はぁ、はぁ……ん、もぅ、メルルちゃんってば……」
 それでも未だ至近で見合う私たちの口元には粘度の高い銀橋が架かり、それは果たして私とロロナちゃんのどちらのものなのだろうか。あるいはそれが仮に私のものなのだとしたら、どうして私はこのような、まさに幼さという概念をそのまま体言しているかのような態の彼女に対してこんな、さっきまでは確かになかった筈の、明らかに常時のそれとは異なる液を分泌してはそれを彼女に塗してしまっているのだ。これは果たして、私がしてもいいことの範疇に含まれるものなのだろうか。
「ね、もっかい……ね?」
 動じる私に気付くこともなく、しかし一体何に逸されているというのか。一刻もままならないといった様子でお代わりを求めるロロナちゃんに対して、まさに求められている私自身がどうして我慢を出来ようか。それ程までに彼女の要求は私の自尊心と、そして劣情とを同時に刺激しては止まず、その、何だ。とにかく、まともでいられる筈がないじゃないか、こんな。
「う、ん……」
 私はせめてこれは仕方のないこと、生理現象なのだと。人間こんな近しいところで接触を繰り返しては例え何ともないことといえども普段と違った様子になるのは仕様のないことで、つまり私に非はないのだ。その点に関しては局的な認可を行いつつ、それでも私は確固たる理性で以てして彼女に対さなくてはならない。
 果たしてロロナちゃんは理解をしているのだろうか。今私たちがしていることは単なる皮膚や粘膜同士の接触では飽き足らず、明らかに他意を含む行為となりつつあることを。
 それは、無邪気特有の純な探究心からくるのだろうか。彼女はそれでもいいかもしれないが、しかし私はどうだ。仮にロロナちゃんが全くの無垢であるとして、私は彼女と同じ歩幅でして合わせていられるのだろうか。そのペースを、保ち続けられるのだろうか。
 ああだこうだと、そうやって考えている間にも、ぴったりと合わせられた口元からは他の空気を混ぜ入れることすら勿体ないのだといわんばかりに、ロロナちゃんの熱く湿った吐息が喉奥へと絶えず送り込まれてくる。
 逃げ場のない私へと届けられてくる彼らは特製、あるいは魔性の媚薬か何かだろうか。温かくて、柔らかくて、ぷにぷにで、さっきから私の脳みそを誑かしては止まず、この手を堕落の一途へと引きずり込もうとひたすらに手招きをしてくれるのだ。おいで、おいで、と。全く、何ということだろうか。誠以て耐え難い。
 やがてロロナちゃんは私との結びを解き、熱い、小さい身体のどこにこれ程の熱を込められるかと思わずにはいられないくらいに火照ったその小さな身で以て、私へとしなだれかかってくる。たったそれだけのことだというのに、垂直に保つべきであろう、心の中の何か振り子のようなものが大きく打撃されては揺さ振られる私。
 それでも、私は一国の姫なのだ、尊敬して止まないトトリ先生の一番弟子なのだと、弛みゆく脳髄が決して零れ落ちてはいけない最後の一線を滑り落ちぬようにと鞭打ち、必死に私を保つ。
 ロロナちゃんは、ロロナちゃんで。私は、私で。子供と、大人で。そもそもが、女と、女で。そうだ、落ち着くのだ、私。何ら惑うことはない。子供の、無邪気な悪戯か何かだと思ってしまえばいい。私も小さな頃はよくやったじゃないか。そういう類のお遊びか何かなのだ、これは。一々、当てられることなどないのだ。
「ねえ、メルルちゃん……」
 だからそうだ。ねえ、小さな子悪魔ちゃん。これ以上、私を惑わせないでほしい。
「ロロナ、小さいから、よく分からないんだけどね……」
 本当に、お願いなのだ。これ以上をそんなにも可愛い声でねだられてしまうと、私はいよいよを以てロロナちゃんをどうにかしてしまうかもしれない。
 ともあれ身を離さそうと。絡み付かれた腕を私がやんわりと解こうとしたまさにその瞬間を狙ったかのように、しかしロロナちゃんは続きを述べてしまって。
「前からずっとこうなの。メルルちゃんといると、こうなの。ねえ、メルルちゃん、メルルちゃんはロロナがどうしてこうなのか、分かる? メルルちゃんといるとね、ロロナ、嬉しいのに、身体がきゅーってしちゃって、おかしくなっちゃいそうなの。ねえメルルちゃん、ロロナ、どこか悪いのかな。病気なのかな?」
 迂闊にも止めることの敵わなかった私に際し、この状況を陳腐な文句を用いて表すというのであれば――その時確かに私の中で張り詰めていた糸のような何かが切れてしまったという、その一点に関しては間違いようのない実であろうと思う。
 決してそうしてはならないものが吹っ切れてしまった私は煮え滾るような内心とは裏腹に、自らでは見ることは適わないけれども、おそらく冷静そのものの面にてロロナちゃんへと応じているのではないだろうか。
 大丈夫だよ、ロロナちゃんのことは私がちゃんと守ってあげるから「ほんと? メルルちゃん、ロロナのこと助けてくれるの?」うん、本当だよ。だからね、ロロナちゃん、今日これからやることと、それから、今まで私たちがやってきたことはね、誰にもいっちゃいけない、二人だけの秘密にしなくちゃいけないんだ。そうしないとね、ロロナちゃんの中の悪いのがもっと悪くなっちゃって、私でも手に負えなくなくなっちゃうの。だから、これは二人だけの秘密にしなくちゃいけないんだ。「わ、悪いの? ロ、ロロナ怖いよお」大丈夫。私のいうことをしっかり聞いてくれれば怖いことなんて何もないから、ね?
 滑らかに回る口がまるで自分のものではないかのようだ。平素の私はこんなのではなかったと思うのだけれども、感情と口頭とが直結したかのような歪みのなさは、あるいはこれが私の心の奥深いところから送られてくる嘘偽りのない感情の吐露そのものであるのだろうか?
 ――いや、そんなことはない。そうではないと信じたい。今は、今だけは仕方がないのだ。こんなにも私を惑わすロロナちゃんがいけない。いや、彼女は悪くないのだけれども、とにかくいけない。今、この瞬間だけは何もかもが絶対におかしいのだ。道理が道理として通らず、だから私たちがこんな異常な事態となってしまうことについても、ある意味正常であるのだ。周りがおかしいのだもの。そんな中で私が、私たちが平静でいられる訳なんてないのだ。
 とまれ、せめて面だけは優しく微笑んでいられますよう。それが、何も分からぬロロナちゃんに与えられるせめてもの安寧であり、且つ、私が生来の私というやつを保つために用意出来る唯一の逃げ道なのだから。
「うん、ロロナ、ちゃんと約束守るよ。メルルちゃんとロロナだけの秘密の約束。えへへ……何だか嬉しいな」
 ああ、本当にこの子は。
 事ここまで至ってはもう何もかもがダメだった。メルルリンス・レーデ・アールズは、確かに折れてしまったのだ。
 せめて手荒にはならぬようにと指から先の神経だけは調合を行う時のように繊細を心掛け、それでも心中はまるで侵略者のそれである。
 しかしこれは仕方がない。頭の天辺から爪先まで、その毛先に至るまでの全てが愛おしいロロナちゃんがいけない。そんな、誰が聞くでもない弁解を心の中で垂れ流しながら確かにその瞬間、紛うことなく拓く、あるいは侵すべく意図で以て。
 一片の疑問すら差し挟む余地のないような純な眼を寄越すロロナちゃんへとついに私は、手を伸ばしてしまったのだ。


「メルルちゃんお出かけするの? それじゃあロロナも一緒に行くー!」

 前提の話をしようと思う。
 トトリ先生の計らいがあって以来、私が調合に必要な材料を採取しに行く段となるとほぼ必ずといってもいい程に、ロロナちゃんが護衛――というには些か大仰な印象があるけれども、ともあれ長短関わらず私の旅路へと同行するようになっていた。
 それはもう、元は凄腕のトトリ先生ですら一目置く程の天才的な錬金術士であったというロロナちゃんであるのだけれども、しかし今現在はどちらかというとやんちゃざかりの子供そのものであって、少し大きな石に蹴躓いて転んでは涙したり、旅路が長くなったり悪路が続いたりするとぐずり出しては私を大いに困らせたものだったんだ。
 そんな様子なものだから、ロロナちゃんと私の二人だけとなると不安が先立つのも仕方がない。アールズの街を出るとなるとトトリ先生か、あるいはトトリ先生の大親友であるミミさんに護衛のお願いをし、開拓事業の状況確認や素材の採取のために各地を巡っているのを常としていた私であり、今振り返ってみてもやはりこれは的確な判断であったと感じる。
 それでもまあ、人間というのは一つの物事に対して繰り返し反復を行うと成長をしていくものであるのだ。これを私に当てはめてみるとすると、ちょっとした量の木材や木の実などが必要になってモヨリの森に行く程度の用事なのであれば、特段に誰へ声掛けをせずとも一人でふらりと行くようになっていた――頃合としてはそれくらいの手省きを行えるくらいには私が開拓事業、あるいは錬金術士としての生業に慣れを感じ始めた時のことだったように記憶している。
 その日もやはり私は圧縮木材の材料とすべく、アイヒェを多量に仕入れようとモヨリの森に出向かんとしていた。如何に王国から近しい場所にある採取地とはいえども流石に日帰りが出来る距離とはいかないため、お弁当代わりのパイを錬金術で作っていたのだ。
 都合、余裕を見た上で先五日程の量を作るとなると調合も何度かに分けての作業となるため、加えてほら、毎度毎度同じ味のパイでは味気がない。プレーンパイにきのこパイ、それとマイスタータルトとをこしらえようとしていた私が何度目かの仕事に取り掛かった時のことだったのだ。
「メルルちゃん、パイを沢山作ってどこかにお出かけするの? ロロナも一緒に行きたいな」
 先に述べた通り、今までの行程ではロロナちゃんを同行させる際には必ずトトリ先生、あるいはミミさんに護衛を依頼していた私なのだが、この日は小さな頃から勝手を知るモヨリの森が行き先であることと、一緒にパイ作りを手伝いたいというロロナちゃんのリクエストに押されてはついつい二人のみでの出立に許しを出してしまったのだ。
「わあい、メルルちゃんと二人きりでお出かけだ! えへへ、嬉しいなあ」
 それもまあ、こんなにも可愛いロロナちゃんの親切心を無下にすることなど私に出来よう筈もなく、せめてウルフなどが襲ってきても大丈夫なよう、攻撃用の錬金アイテムも少々を用意し、パイも出来たしさあ準備は万端と。私と同道出来る嬉しさを隠しもしないロロナちゃんに釣られるかのような心象、やはり私もどこか浮かれたような心持ちで以て、私たちは二人だけの採取に出たのだった。

 その時の採取それ自体の行程は全く滞りなく進んでいたように感じる。
 予定通りに約一日を掛けてモヨリの森へと移動した私たちだったが、やはり到着する頃には空も周囲も暗くなってしまっており、流石にこれから採取を行うのは賢明ではないだろうと。私は森に入ってから少し奥側へと入り込んだところへと真っ直ぐに足を向ける。
 事この地に関しては、よく足を向ける採取地であるためにやり方というのも大分定まってきたものだ。入り口すぐのところにある溜め池、というには少々小さすぎるかなといった態の、おそらく雨水か何かの溜まり場なのだと思う。
 既に私が逗留地として何度か使用しているそこは、周囲に延焼の恐れがなさそうなポイントを選んでは火熾しをした痕跡があり、やはり今回もその地点をベースとして活動を行う予定でいたのだ。
 当然といえば当然のことなのだが、流石の私もパイと爆弾だけを持って来たという訳ではない。仕入れる予定だったそれとはまた別に用意して来たアイヒェの木片を取り出し、早速野営の用意へと取り掛かる。
「ねえねえ、メルルちゃん。ロロナにも何かお手伝い出来ることはなーい?」
「うーん、そうだなあ。じゃあね、この器の中にお水を入れてきてもらおうかな。あんまり一杯にしても今日は私たちしかいないから、ロロナちゃんの手が疲れないくらいで大丈夫だよ」
「うん、分かったよ!」
 甲斐甲斐しくも献身を提案してくれるロロナちゃんに心をほっこりとさせながら、私は組み立てたアイヒェの一片へとフラムにも使う着火用の火薬をほんの少しだけ塗し、次いで点火を施す。カップやら少し大きめの受け皿やら、おそらく晩御飯に用いることになるであろう食器を用意しながらも火種が問題なく成長しては全体へと行き渡ったことを確認した辺りで、お使いを頼んでいたロロナちゃんが戻って来た。
「えへへ、ロロナちょっとだけ頑張りすぎちゃった」
 その小さな身には余る程の重量を支えてしまっているのか、力一杯踏ん張った両腕をぷるぷると震えさせながらも強がるその愛らしい様に軽く胸を打たれた私は、偉い偉い、と、仕事を終えたばかりのその頭をくしゃくしゃと撫でやってやる。
「んふふー」
 そうやって何か眩しいものを見るかのようの目を細めるロロナちゃんを暫時褒め上げたのちに、ぼちぼちと食事の準備へと取り掛かることとした。
 パイの包みを解いて、ロロナちゃんが汲んできてくれた水を火に掛け、他所行き用のためにと少し頑丈に作られたティーポットへと茶葉を落としては沸騰したお湯を注ぎ込む。
「わあ、いい匂い」
 ロロナちゃんがいう通り、湯に焙られるかのようにその芳香を周囲へと満遍なく振り撒く紅茶の香りを暫し堪能しつつ、数分の間を他愛のないお話でリレーしつつも、さてぼちぼちと頃合いだ。
 私は、予めお湯を注いで温めておいたカップの中身を再び薪上のそれへと戻し、熱々の白陶器へと湯気立ち昇る琥珀を代わりとして注ぎ入れる。思わずといった態で感嘆の声を上げるロロナちゃんについては私としても異論などなく、先よりも濃厚な香りを間近で当てられてはいやはや食欲を刺激されて止まない。
 やがて二人分を淹れ終えては一枚の受け皿の上にパイを数枚取り出し、さて。
「それじゃあ遅くなったけどご飯にしようか。いただきまーす」
「いただきまーす!!」
 私のご機嫌に調子を合わせるように尻を伸ばすロロナちゃんと暫時微笑み合っては、ともあれ実際にお腹が空いていたのだ。私はまず自身でもお気に入りのプレーンパイから取り掛かることとする。
「うーん、やっぱりメルルちゃんの作ってくれたパイは美味しいな! ロロナお腹空いてたから、一杯食べちゃうよ」
「そういってもらえると嬉しいなあ。ロロナちゃんのために沢山作ってきたからね。今回はちょっとずつ食べないといけないとかそういうこともないから、好きなだけ食べてね」
「うん! メルルちゃんありがとう」
 ロロナちゃんのいいところは何時だって裏表なく真っ直ぐに感情を表現してくれるところであると私は感じる。
 童心故の無邪気さから来るそれは、仮に私がこうやって上手に作れた時は美味しい美味しいと舌鼓を打ってくれるし、逆にちょっと失敗したかなあと思った時には下手なフォローをすることもなく、前の方がいいなあとか、しっかりといってくれるのだ。
 相手に因ってはまあ、そんな何でもかんでもをズバズバと切り込まれては心が折れそうになったりもするものだが、ロロナちゃんが相手なのであれば素直に内省し、次はこの子の心からの笑顔を引き出してあげようじゃないかと前向きな気持ちになれる。
 錬金術にしてもパイ作りにしても、ロロナちゃんの存在というやつは思った以上に私の支えになっているのかもしれないなあと、そんなことを考えながら彼女の笑顔を楽しみながら手を進めていたらば、気付くと今夜の分はロロナちゃんが今口にしているそれで終わりのようだった。カップの中身も空になってしまっていた私は彼女の邪魔にならないよう、汲んで来てもらった水でして今し方食事に使った器を流しに掛かる。
 本当は石鹸か何かで綺麗に出来ればいいのだけれども、ケイナの万能カバンでもない限りにそれは無理な相談というやつで、まあ外出の錬金術士のその日暮らしなんてこんなものだ。それなりに汚れが落ちたことを認めては布巾で磨いて、衛生的にも問題はないことだろうと思う。
「ごちそうさまー! 美味しかったあ」
 やがて食べ終えた彼女の器も同様に仕舞い込んではさて、周囲もすっかり暗くなっていることだし、ロロナちゃんにしても食い気の次は眠気のご様子だ。とろんとした目を擦るその様を汲んでは、私は寝床の用意に取り掛かる。
 トトリ先生たちとの慣例では人数が多いようだと各人用の寝袋をそれぞれ用意するものだけれども、今回はロロナちゃんとの二人だけという都合上、布団タイプのそれを持って来た私である。まあ、近場だし多少は失敗しても許されるでしょうと、新しく作ってみた寝具の具合も確認してみたかったのだ。
 私は、荷物袋の中から下ろし立ての生地を広げる。
 薄手ながらも防寒性と耐衝撃性、肌触りに優れるネイロンフェザーを材質にして作ってみた一品だ。まだ試作の段階を出ないものなのだが、まあ、だからこそ今回で使用感を確かめようというのだ。ロロナちゃんにはちょっと申し訳ないと思うけれども、今回ばかりは付き合って頂こうと思う。
 まずは下敷きを地面に広げては軽く手で押し込んでみて、よし。これならばぺしゃんこだったり、あるいは硬すぎて寝辛いということもないだろう。思った以上の具合のよさに、まずは抱えていた不安が一つ解消される。
「ロロナちゃん、ロロナちゃん」
 そう呼びかけると、先に履物を脱いでは開いたばかりのその上に腰掛ける私へとロロナちゃんも倣ってくれる。
「いつもと違うやつだけど、これ、ふかふかだねえ」
 彼女にしてもご好評のようで何よりだった。いい素材を使ったものだから、薄手による携帯性と、肌触りを始めとする実用性とを両立させ得る品へと仕上がったようだ。改良の余地はあるかもしれないが、今後もこれをベースとした野外用の寝具を研究していってみよう。
 そうして自らの仕事に手応えを覚えては感じ入る私だが、ロロナちゃんにしてはそろそろ本格的におねむのようであった。いよいよ意識も途切れ途切れといった具合に欠伸を繰り返すその様に、私は就寝の準備を急ぐこととする。
 薪を新たに焼べては燃え加減を調整し、それが落ち着いたならば今度は魔物よけとして持って来たアロマを焚く。種族に因っては逆効果となるこれも事モヨリの森周辺の魔物相手には効果覿面であるようで、ともあれお陰様で急襲に備えては気を張りながら眠るという修行僧のような苦行をせずとも済む。
 その他、細々とした用意を整えてはネイロンの上掛けを取り出して、まずはロロナちゃんを横にさせ、次いで私もその隣でお揃いとなる。足元からゆっくりと被せては、私としては暑すぎず寒すぎず、具合のいいものだけれども果たしてロロナちゃんはどうだろうか。
「大丈夫? ロロナちゃん、寒くない?」
「う……ん、ロロナ、へぇーき……」
 既に半ば夢の中であるようで、これはまた邪魔をするのも悪いだろう。感想なんてものは起きてからでも聞けるし、何よりこういうものはぱっと使った、触ってみた、では実なる評価など分かったものではないだろう。寝るために用意した道具なのだ。実際に就寝に用いてみて、起きてから確かめるくらいできっと丁度いいのだ。
 そう決めた私はロロナちゃんが息苦しくならないよう布団の位置を改めてから、やはり彼女が寒くならないようにとぴったりと寄り添っては意識を眠りの方へと向け始める。
 慣れてきたとはいえ、やはり一日近くを掛けての行程というのは身体に疲労を蓄積させるには十分すぎる程の仕事である。あっという間に睡魔に手を掛けることの叶った私は、髪を解くことすらも忘れ、頭をロロナちゃんのおとがいに寄せては没入する。
 何だかあったかくて、いい匂いだなあ。
 心地のよい微睡みへと包まれた私はやがて、意識を闇の方へと送り遣る。今夜はどうも、いい夢が見られそうな気がした。

 採取に訪れてから三日目の夜、初日の移動を除いて実際に作業へと取り掛かってからは二日目ということになるが、目当てであった圧縮木材用の素材も十分な程に揃えられたと思う。場合に因ってはもう一日くらいは必要であるかもしれないと見込んだ分の食料も準備していた私ではあったのだが、どうやら余裕を持って終えることが出来そうだった。
 それでもまあ、本日にしても全日をアイヒェの採取に掛かり切りであったため、気付けば日も落ちては周囲の木々もとっぷりと闇色に浸かっているような様であって、そういう意味では明日に持ち越さないためのリミットというやつはギリギリであったのかもしれないのだが。
 ともあれお腹を空かせた様子のロロナちゃんに、味付けにこそ変化があれど基本的には先日から代わり映えのしないパイご飯を急ぎ振る舞って、そのあとに少しだけ他愛のないお喋りをし、採取も今日で終わりだよと告げた私へと、達成感から来るものなのだろうか。疲れさえも何のそのといった具合にご機嫌を纏う彼女とお互いの仕事を褒め称えては、さてこちらも定例通りのこととなっている。やがて眠気まなこへと遷移するロロナちゃんを寝かし付ける作業へと移る。
 この数日ですっかり慣れを覚え始めたネイロンフェザーの肌触りを設置しては横になろうとしたその段、しかし間近にまで接近した弾みでロロナちゃんの匂いが平素のそれよりも強いことが気に掛かった。私にしてもぼちぼちと三日間なのだ。自身ではどうしても分かり辛いものなのだが、やはり似たような様になっていることであろうと思う。
「ロロナちゃん、寝る前に身体を綺麗にしようね」
「う、うぅーん? ロロナもうおねむだよお」
「ああ、そうだよね、眠いよね。私がやってあげるから、ロロナちゃんは偉い子だから、ちょっとだけ我慢して座ってようね?」
「う、ん……ロロナ我慢するぅ」
 健気にも私の提案を守り、本格的に舟漕ぎの旅へと出るその一歩手前を保ってくれているロロナちゃんを視界の端へと置いてはさて、私にしても手際をよくやらなくてはならないだろう。
 お茶を淹れるために温めておいたお湯は既に火上からは外してある。それをそのまま使えるだろうか、と慎重に器の中身へと指先を差し込んでは丁度ぬるま湯といった加減であった。タオルを取り出しては湯を馴染ませ、絞り、再び彼女へと向き合う。
「はーい、ロロナちゃん。ぬぎぬぎしましょうねー」
 ロロナちゃんの着衣の構造上、そのままでは身体を拭うことは敵わない。
 私はあまり彼女を刺激しないよう、ワンピースドレスのボタンを外しては腰元まで下ろし、次いでシャツのボタンも同様にしては、こればっかりはまあしかしロロナちゃんの協力なしにはどうしようもないことであろう。
「ロロナちゃーん、はい、ばんざーい」
「はーい……」
 眠気と戦いながらも私の指示には従ってくれて、いい子だ。諸手を挙げてくれるロロナちゃんの腕が力尽きない内にと、私はその腕から片方ずつシャツを抜き取り、やがて半身の脱衣を果たす。
 そのまま取り掛かる前にと、彼女の首筋の辺りでちょっとだけ鼻を利かせてみる私はしかし、やはりそうであった。決して嫌な匂いではないことをまず先に述べておきつつも、普段よりも一層に強いロロナちゃんのそれはこの数日を私のために頑張ってくれた証に等しいものでもある。
「ん……」
 今までにない、ひたりとした感触が刺激になってしまったのだろうか。肌にタオルを当てたまさにそのタイミングで薄目を開いては、軽く呻くような声を漏らすロロナちゃんで、微睡みの最中にこうされては確かに気になることだろう。
 それでもまあ、気付いてしまった保護者の私としてはこうも汗を纏ったままの彼女をそのまま眠りにつかせる訳にもいかず、申し訳ないが終わるまではちょっぴりと我慢して頂くしかない。
「きれいきれいしますねー」
 拭っては洗い直し、拭っては洗い直し。そうやって私は、精一杯の労いの念と共にロロナちゃんの肌を磨く作業に努める。
 たまにこう、やはり敏感であったりするのだろうか。微妙な部分をタオルが通過する度にくすぐったそうにする彼女のその様子を、可愛いものだなあとか思いながら手を動かし続けたらばやがて上は終わりだ。改めてタオルを絞り直してはさて、あとはもう半分だけである。
「ロロナちゃん、次は下の方をやるからね。ごろんって、横になっちゃってもいいよ」
「うん、分かったあ」
 目元を擦りながらも何とか意識を保っているといった態のロロナちゃんは私の言葉に従ってネイロンの上に横になるのだが、しかしこれは不覚であった。その、意図せずとも目の前に広がった光景へと小さく心臓が跳ねる。
 いわゆる肌着の上にワンピースを一枚纏っているだけの彼女の、そのアウターと上半分のインナーを取り払ったのは誰でもないこの私なのであって、そうするとまあ、当然だ。上半身がすっぽんぽんで腰より下がいつもの白タイツのみといった具合で半裸に剥かれた、客観的にいうならばそのような状態のロロナちゃんが私の目の前に寝転がっているのだ。
 自らがどのような姿を私に晒しているのかも露知らず、あるいは彼女からすれば私はお姉ちゃんかもしくはお母さんのようなもので、そういうところを気にする対象ではないのかもしれない。
 ともあれ横になったことでいよいよ疲れの自覚が顕著になってきたのだろう。完全に眠ってしまっている訳ではないのだけれども、もうほとんどが夢の中の住人へ化しているといっても過言ではないロロナちゃんは、その余りにも無防備な幼姿を惜しげもなく私へと晒し続けており、いや、だからといって何ということはないのだけれども、どうしたことか。妙に気恥ずかしい私なのだ。何故だろうか。
 あれこれと、とりあえずは切り替えよう。あまり余計に考えても益を上げられそうにないその案件については一先ず置いておき、私は先までと同じペースでただロロナちゃんの身体を磨いてあげればいいのだ。たったそれだけのことなのである。どこに問題があるだろうか。
「ロロナちゃん、下も下ろすね?」
「う……ん」
 先よりも鈍い反応の彼女は、それでも許しをくれたものなのだろうか。いずれにせよ脱がさなくては出来ない仕事なのだ。やってしまおうと。そう私は思い立ってロロナちゃんとストッキングとの間に指を差し込んでは足元へと下ろし始めたのだが、しかしこれがいけなかった。
 多少蒸れていたのかもしれない。私が開放することによって顕になる彼女の地肌からは他所よりも強いロロナちゃん自身の香りが立ち上り、加えて匂いというものはまず上の方に昇ってくるものでしょう。立ち上り、というくらいなのだから。
 その、曰くところ彼女の直上にいるというのは誰でもないこの私、メルルなのであって、すなわち私はまともに当てられてしまったのだ。酸いような、甘いような、ロロナちゃん元来の香りに煽られては頭の中がクラクラとしてしまって、私は少時、自らの為すべきことすらを忘却してはぼうっと佇んでしまうのだ。
 どうしたものかと、私には何が出来るのかと、斯様な方向へと流れてしまいそうになる思考をしかしすんでのところで思い留める。何が出来るのか、ではなく、何をするべきなのか、が大切なのだ。
 私がこの短い人生経験で強く学んだこととして、余計なことを考えて手を広げてしまっては大概の事態というものが悪い方向へと転がっていくものであり、特に経験不足の分野においては分を弁えることこそが肝要なんだ。後ろ盾がある際には敢えてその道へと挑戦していくのも大切なことではあるのだけれども、私が今直面している事項については明らかにその限りではなく、すなわち下手に冒険をするべきではない。
 ともあれ平静を保つのだ。おかしなことに、多少とはいえ緊張で震えてしまっている指先のコントロールに戸惑いつつも、なるべく他方を考えないように心掛けながら作業へと専念する。
 するり、するりと、私が指を引っ掛けては足元へと引いていく度にロロナちゃんの玉のようなお御足が顕となっていき、また、白色の面積が肌色へと変わっていくその都度、私は自分でもよく分からない類の呵責に頭を悩ませなくてはならなくなってしまう。
 果たしてケイナもこのような心持ちであったのだろうか。彼女には着替えから何からを引っ括めて幼少の頃から私の身辺のお世話をしてもらっていたものだけれども、そうだとしたならばこれは大変な仕事だ。従来においても彼女の手際については既に一目置くところがあるような態であったのだが、どうやら私は今一度その認識を改めなくてはならないのかもしれない。
 当の本人はまさかこんなタイミングで自分が思われているなどと知る由もないであろうが、ともあれ最大限の敬意をケイナに送り続けることによってある程度は自身に対する邪推の念を紛らわすことが敵ったようだった。先よりは幾分か軽い心持ちで作業に努めていたらば、それもやがて爪先まで至り、終わりだ。
 自分でも知らず内に汗をかいてしまっているようだった。額に浮かんだそれを手の甲で軽く拭いながら、今まさに抜き取ったばかりのストッキングを先程畳み寄せておいたシャツの上に、やはり簡単に折っては添え置く。
 ちらと見やると、目の前で横になるロロナちゃんの身に掛かる衣類はもはや可愛らしい白色のショーツ一枚だけといった様であり、そんな姿で無邪気な寝息を立てているのだ。こんなにも彼女に信頼されているのだなという温かな実感を抱く反面、その好意に対し万全たる応じを出来ない自身に少々の罪悪感を覚える。私は、私が思っている以上に心が弱いやつなのかもしれない。
 余事に気を回しつつも、しかしロロナちゃんをいつまでもこんな格好のままで置いておく訳にはいかないだろう。さっきまでと同じことだ。タオルを湯に浸けては絞り、どこから取り掛かればいいのかと暫時迷った挙句、私は左の足首から取り掛かることとした。
 白くて華奢で、ともすれば折れてしまいそうな細足にたとえ傷の一つでさえ付けぬよう、私は細心の注意でして手元を動かす。くるぶしの辺りからその周囲を一周してはくすぐったくならない程度に指先までを撫でて、そうして絞り直しては順繰り順繰りと上の方を目指していくという、しかしこんな単純な過程でどうしてこんなにも精神的疲労を覚えなくてはならないのだろうか。落ち着くのだ、メルル。平常心、平常心だ。
 そうやって私が得体の知れない惑わしと戦っている内にもやがて左の表側は終了するのだけれども、ロロナちゃんは仰向けに寝そべっているものだから、地面の側にある肌を拭こうとすればどうしても足を持ちあげなくてはいけない。その仕事について、どうにも今以上に大変なことになってしまいそうな得もいわれぬ予感を抱きつつも、しかし私は始めてしまったのだ。今更になってあと戻りなど利いたものではない。
 私はやはり、まずは足首を基点にロロナちゃんの片足を浮かしてはふくらはぎから膝の裏までをゆっくりゆっくりと撫で摩るようにする。
 タオル越しに手の平へと伝わってくる足裏の感触はまるで自分と同じ生物とは思えない程の柔らかさで、アストリッドさんの設定年齢上、肉の丸みなどまだほとんどが付き切ってはいないような年頃だというのに、果たしてどうしてこんなにもぷにぷにとしているのだろうか。私にも似たような時期があったものだろうかとふと記憶を巡らせてみるが、そんなことを意識して自分の身体というものを改めたことは今までの人生で一度たりともありはしなかった上に、そもそもこんな発想それ自体が馬鹿げているというんだ。何もかもが徒労に終わってしまう。
 しかし、手が止まってしまっていた。膝元までは終わったものだけれども、その先となるとロロナちゃんに寝返りを打ってもらうか、あるいはより一層高々とその細足を掲げなくてはならず、しかし寝返りを打ったとてどうせまた逆側に取り掛かってはその度に反対側にしなくてはならないのだ。手間を考えるならばこのままやるべきなのだろうけれども。
 ともあれ思い至った私は、足首に添えていた手を今し方磨き終えた膝の裏へと持っていき、大きく上方へと掲げる。柔軟性に富んだ筋肉は特段に痛むこともないのだろう。何ら無理なこともなく大きな開脚を果たしては、その末に私の目の前には彼女の真っ白な太もも、その裏側が開けることとなり――事ここに至り、大変なことになってしまいそうだと感じた先程の私の想定はしかし、やはり正しかったのだ。
 片足は寝せ、その逆を上に上げたことによってその付け根に纏った衣類、いやまあこの場合はショーツな訳だけれども、とにかくそこが食い込んでいるのかあるいは複雑に伸縮してしまってはそうなっているのか、一々とその状態を改めることは今の私には出来ないのだけれども、とにかく厄介な凹凸と皺とを形作り、今や私の目の前へと顕現している。
 加えていうのであれば、ロロナちゃんの足を半ば抱きかかえるようにしている私に対して、やはり中心部というものが最も逃げ辛く、また篭もりやすいのであろう。下方から立ち込めてくるロロナちゃんの強い香りを図らずとも私の嗅覚が橋渡しをし、脳にまで送り届けては正常な思考をしようと懸命に動作をする彼らを一つ一つ屈服させ、視覚から送られて来る情報と併せては、次第に私を冷静ではいられなくしていくのだ。理解をせども、何とも抗い難いことだろうか。
「ロロナちゃん、気持ちいい?」
 どうしてそう呟いたのかが自分でもよく分からないのだけれども、本格的に眠りに就いてしまったのか、ロロナちゃんからの返事はない。こうなってしまっては私はいよいよ冷静ではいられなかったのだと思う。
 私は、手際よく太ももを拭ってはタオルを洗い直し、次いで右側へと取り掛かる。一度やったことによって多少の勝手を覚えてきたのか、先程までと比べると幾段もスムーズに手が動く。あるいは、その次を考えては私の気が逸っていただけなのかもしれないが。
 ともあれあっという間に終了だ。掲げていた足を、気持ちがよさそうに寝息を立てるロロナちゃんを刺激しないようにゆっくりと下ろしては汗の染みた布を洗い直す。鍋の中に張った湯の表面にはロロナちゃんから拭ったものがじんわりと浮き出ており、たったそれだけのことだというのにどうしてあれこれと余計な些事を念じてしまうのだろうか。今の私にはロロナちゃんに関する何もかもが刺激的でいけない。まともな判断がつかなくなってしまう。
 いずれにせよ、いよいよだ。私は生唾を飲み込んでは彼女に再度接近を行う。その小さな肢体の内で磨いていないところなどもはやそこでしか在らず、やはり私はそれを目的としてロロナちゃんに近づき、そして今まさに手を伸ばさんとしているのだ。
「ロロナちゃん、ここも綺麗にするね」
 布の縁に指を掛けては形式こそそうやって彼女に確認をするものの、私はロロナちゃんが既に意識を失い、私に対応する術を失っていることを承知しているのだ。
 その上で私が斯様な発言を行うというのは、これから自らが行うであろう尋常ではない行為に対する免罪符というやつを一つでも多く積み上げては保身を図りたかった、その一心から来たためであるのかもしれない。
 私のために頑張ってくれたロロナちゃんの身体を綺麗にしてあげなくてはならない。
 どうせやるのであればやり易いところばかりではなく、満遍なく全身を綺麗にしてあげなくてはならない。
 取り掛かるに際して、私は確かにロロナちゃんに同意を求めていた。
 それでもロロナちゃんはしかしぐっすりと眠ってしまっていて、こうなっては年長であり今この時は彼女の保護者でもある私がしっかりと面倒を見てあげなくてはならない。
 ――そう。だから、私が今こうすることは全く以て仕方のないことなんだ。
 迷いがなかったとはいい切れない。それでも私は掛けた指に力を込めて、最後の布をゆっくりゆっくりと下ろし始める。
 つるりとした肌が次第と顕になっていくのに伴って、喉と口内はカラカラに干上がっていく。眼球の筋肉にはまるで自由が利かず、焦点と視点とをただその一点に注ぎ込んだままに私の世界はたったそれだけが唯一のものとなってしまう。
 そうやって、慎重に、慎重にと手掛けては亀のような歩みとなってしまっていた私ではあったが、延々と続くかのように思えていた丘陵地帯にもやがて変化が生じる。
 最初、私にはそれが何だか分からなかった。いや、確かに私にもあって然るべしものなのであって物自体は何であるのかを理解はしていたのだ。それでも、自らのものですらまじまじと改めたことのない私にとって、今の私とは明らかに掛け離れた幼姿をしたそれをそれとして捉えるためには少々の時間を要したのだ。
 ――いや、私事をぐだぐだと申し上げてしまった。ともあれロロナちゃんだ。ロロナちゃんの縦筋なのだ。内の肝要を守るためにそのような形状を採っているのだろうか、ぴったりと閉じ合わされた二枚の肉を彼女の真ん中なのだと確認した途端に私の心臓は大きく跳ね鳴り、背中から、頭から、足元に到るまで、身体の内から火傷をせんばかりに熱せられた血液が濁流となっては身体中を駆け巡った。
 落ち着け、落ち着くのだと。そもそも私はどうして、女の子の、しかもこんな小さなロロナちゃん相手に一々意気込んでしまっているのだ。ケイナが昔から私にしてあげているようなことだ。脱がして着せて、私たちが何度も繰り返してきた着替えのお手伝いと何ら変わることはない。ロロナちゃんはそれに関して、今の私に比べるとほんのちょっとだけ手が掛かるだけなのであって、そう、それだけのことなのだ。歳相応というやつだ。私は何ら動じる必要などない。
 そうして頭で理解――あるいはこれは自己に対する暗示と呼ぶのかもしれないが、この際どちらでもいい――をせんとする私ではあるのだが、しかし閑雅を心掛ける脳とは裏腹に私の心の臓は大きく脈打ち、大量の血液を身体の隅々にまで送り届けては全身の代謝を活発化させる。鏡がないので改められたものではないが、至るところの汗腺が平時のそれよりも開いては玉のような汗が浮かんでいるかのような感触がある。どうしてか、とても暑い。
 それでもやがて額に溜まった雫の内の一つが自重に耐え兼ね、表面張力が敗北を宣言し、頬、喉元へと伝い落ちていった頃合いにて、私はいよいよ最後の一枚であった布を脱がし終える。左手に乗るそれはほっこりと温かく、しっとりと湿り気を帯び、やや油脂的な滑りをもまた同時に含んでいて、私は何を考えるでもなく暫くの間を手元の布に視線を注ぎ続けることで一杯となってしまう。しまうのだが。
 ああでもこれは、畳んで仕舞っておかなくてはならない。
 寸時を呆としていた私ではあったが、しかしこれではいけないのだと至る。頭を正常に回すための部品のどこかに不調が生じてはまともな運転を回すことが出来なくなっているのは、もはや私が取り得ているアクションそれら一つ一つを省みれば明らかなことなのであって、そうだとしたならばせめて私は、出来ないなら出来ないなりの、不調であるならば不調であるなりの対応を起こさなくてはならないのだ。これら自覚が出来ている内は私はまだ大丈夫だ。とにかく、手元のことから一つ一つ、やれることから丁寧に片付けていかなくてはならない。
 際して、私はこんなにも不器用だっただろうか。震えているのか、あるいはどうかは分からないが、ともあれ平素よりも上手く動かせない感のある手元をそれでも必死に操っては、ようやっとロロナちゃんのショーツを畳み終える。
 先に重ねておいた衣類の上に合わせるようにしては、しかしどうしてそうしてしまったのか。今し方その布を触っていた手元へと鼻を近づけてはすんすんと鼻を利かせてしまった私は、ある程度は予想通りの、しかし大概が予想以上の刺激に対して完全に頭の中が日和り上がってしまった。
 城内の家庭教師から教えられていた講義の内に生物学のような科目もあったのだが、ふとその時間の内で教わった内容の一つが頭の中で巡りゆく。
 あれは、昆虫か何かの生態や身体の構造について談義をしていた時だったと思う。仲間に危険を報せる役割や、餌の所在を示すための道標の役割を持つものなどもあると伺ったが、ここで重要となるのは今の私が直面している状況に関するような、すなわち理屈を抜きに直接生理状態へと訴え掛けてくるようなそういう存在なのだ。
 それは、確かフェロモンだとかいっただろうか。名前まではあやふやなのだけれども、そのフェロモンというやつは果たしてどの感覚から私を操るのだろうか。私の目を釘付けにするその寝姿か、あるいは鈴が転がるかのように甘やかな音を誘う声帯か、本命はやはり先程から私の思考を麻痺させてはその存在を主張して止まない匂いなのか、あるいはその他五感に訴えてくるそれら全ての総称であるのかもしれない。
 閑話休題。定かではない原理へと右往左往する思惟についてはこの際捨て置くとする。何やかんやと手段を講じては理性という籠庭へ逃げ込もうとする私なのだが、ロロナちゃんの吸引力たるや凄まじいものがあり、私が拠る辺にせんとする彼ら手綱を片っ端から切り落としていってはじわり、じわりと私を引き寄せていくのだ。もはや私の周囲には私の身一つ、その他にはロロナちゃん以外の何者も在らず、私はいよいよを以てその手に捕らえられてしまったのだ。
「ロロナちゃん……」
 膝と腕とを立てた前傾姿勢にて、私はついとロロナちゃんへと迫る。
「ロロナちゃん……」
 自らが冷静ではないことを冷静に把握してはそれに揺らぐことなき許しを与えてしまっている私は今、この世界においてロロナちゃんにとっては最も危険な存在に違いなく、だからといっても自分ではもうどうすることもならない。歯止めが利かないのだ。
「きれいに、するね。大丈夫だからね。痛くないからね」
 手にしていたタオルを用いることなく、手始めといわんばかりに私はロロナちゃんのそこへと嗅ぎ付くこととした。鼻先をロロナちゃんへと接触するすれすれの位置にまで接近させては大きく息を吸い込むようにするのだけれども――結果から述べるのであれば、この早計とも呼ぶべき行動こそがこの後に私が起こすこととなる業、それら全ての発端となったのだろうと思う。
 何せそれは、とてもダメだったのだ。私が平時たる私を維持せんと保ち続ける何かそういうものをいよいよ決定的なまでに崩落させてしまい、しかしそれも仕方のないことだと思うのだ。斯様な敗北を抵抗なく受け入れられる程に、私にとってその刺激は強く、また、中毒性がありすぎた。
 その、匂い自体は先程ショーツに触れた、その時の移り香に近いものがあるのだけれども、やはり濃度が段違いだった。長旅でしてこうやって歩き回っていたのだから仕方のないことなのだけれども、大変に蒸れてしまったような香りと、それと少々のアンモニアの匂いとが強烈に混ぜ込まれてはともすればむせ返ってしまいそうな程の余薫があとからあとからと私の嗅覚に押し寄せてくる。
 普通にしていれば不快な類のそれは、しかしロロナちゃんのものなのかと思うと私の興奮を促進するための材料、それ以外の何物にもならず、飽きもせずに私は充満する周囲の空気を吸い込み続けることに没頭するのだ。
 それもやがて肺の中の空気がロロナちゃんで一杯になったかのような心象を覚えては、次の段階である。欲の深い私は既に我慢など利くことがならなくなり、もう一つ先に踏み込んでみることとする。ここまでは来てはもう、躊躇いという言葉は私の頭の中から完全に霧散してしまっていた。
「ん……」
 私は、迷うことなくその領域へと舌を付ける。接着のその際に、ロロナちゃんの身体がふるりと震えたような気がしたのは果たして私の気のせいだったろうか。
 ともあれ些事であろう。それどころではない私は、具合を確かめるようにゆっくりと口元を動かすこととした。
 最初こそ、そのぴりりとした刺激と、しょっぱいような苦いような味覚に舌先が引っ込みそうになったものの、その瞬間を越境してしまえばあとはもう留まることなどなかった。あるいは絶えず送られて来るロロナちゃんの芳香が私をあと押ししていたのかもしれない。
 起因はともあれ何か覚悟のようなものに至ってしまった私は、触れるだけでいた舌をいよいよ周囲へと這わせ始めるようにする。
 味覚が慣れてきたのか、あるいは私が一度通ることによっていい塩梅に薄まっているのか、ロロナちゃんの肌は道を重ねるごとに具合がよくなっていく。いつの間にか私の中にくすぶっていた機微はすっかりと失せてしまっており、私はただ彼女の肌の感触と味とに没入するのみとなってしまう。
「ふ……ん……」
 くすぐったいのだろうか。私が悪戯をする度にロロナちゃんは身体の内に溜まった空気を圧縮して吐き出すかのような吐息を漏らし、その音色がまた私の所業に一層の熱を入れるんだ。
 右手に持っているタオルが微温くなってしまっているのがしかし妙に間抜けな心象を私へと与える。本来使うべきであるそれを完全に放棄し、どうして私は自らの舌で以てロロナちゃんの汚れを磨き続けているのだろうか。
 それでも、あるいはこれは間抜けなどではなくて、非常に原始的な地点へと私たちは回帰しているだけなのかもしれない。多くの野生動物たちがそうするように、自らの毛並みの汚れを舐め清めるというその行動は文明や資源という後ろ盾がない彼らにとっては至って自然な行為なのであって、何ら恥じるべきものではないのだけれども、ああでも、その理屈でいくならば今の私には文明も資源も共にあるではないか。私は何を気取っているのだろう。そんな問題ではない。私は、ロロナちゃんが美味しくて仕方がないのだ。今更になってからそんな格好を付けるだなんて、それはいけない。
「ロロナちゃん、美味しい……」
 気付くと口にすら出してしまっていた。脳を通ることなく直接口が動いてしまったかのようなその発言にはしかし間違いなど非ず、素直な私そのものである。そうだ、間違いなどない。ロロナちゃんの肌はとても美味い。
「ロロナちゃん、ロロナちゃん」
 私はまるで何かに取り憑かれてしまったかのようにうわ言を繰り返し、ロロナちゃんを味わい続ける。舌を重ねる度に変化を遂げる味が飽きを遠ざけ、幾ら反復をしようとも極上の張りと弾力して私を押し返す肌の感触が私の勢いに拍車を掛ける。
 もはや私の頭の中はロロナちゃんのそこのことで一杯になってしまい、現に私の目の中にはその他の何物も映り込みはしない。ロロナちゃんを股を見、匂いを嗅ぎ、肉の柔らかさを愉しみ、味わい、そして、上品を心掛けつつもどうしても立ち上がってしまう粘着質な音を聴き、それらのみを認知し続けるんだ。
 だからだったのだろう。
「う、ん、メルルちゃん……そんなところ、汚い、よ……?」
 私が、ロロナちゃんが覚醒しているというその事実を、まさに彼女自らが声を掛けてくるその瞬間まで気付くことがなかったのは。


「メルルちゃん、ロロナ、何だかドキドキしてきたよ……」

 私の話をしようと思う。
 ともあれかくもあれ起因というものはままあれど、諸悪の根源というものは何を隠そう私自身のロロナちゃんに対する尋常ではない感情そのものなのであり、そしてそれは現在進行形で顕現中なのである。非常に申し開き難いことに、世間体だとか斯様な面から鑑みたらば誠以て最悪な形でして、だ。
 然してそれももはや今更だろうか。後悔や懺悔というやつはそれこそここに至るまで嫌となる程にしたはずなのである。この際捨て置くこととして、それよりも今の私のことだ。
 半ば騙し討ちに近い形であるとはいえ、ロロナちゃんからの許しを得た私は予てよりも随分と大胆にその身体へと触れるようになったものだと思う。人間開き直るとどこまでもいってしまうものなのだなと、自らの変わりようを見て感じ入らずにはいられない。
「ロロナちゃんはドキドキするだけ? 他には何か、どうでもない?」
 何せこんな意地悪すら口から出てくるようになるのだ。ロロナちゃんくらいの年頃であればこの状況下、おそらく自分の身に何が起こっているのかそれについてすら定かではなく、私としては斯様な前提知識のない、素のロロナちゃんの所感を聞いてみたいという心があった。
 果たして私の思惑通りにロロナちゃんはこの場に適する言葉を探し続けているのだろうか。戸惑ったような、困ったような表情を浮かべながら私の愛撫をひたすらに受け続けている。可愛くて仕方がない。
「えっとね、ロロナね、何かね」
「うん……?」
 まとまったのだろうか。与えられた宿題を再度確認しては提出を試みようとするロロナちゃんのために手元を緩めながら、それでも決して止めるようなことはしない。常にその感触を考えてもらいながらロロナちゃんには回答を頂くべきだと思うんだ。
「メルルちゃんがね、ロロナのことを触ってると、こう、ふるふるってしたり、ぞくぞくしたり、ふわふわーってなったりするんだけどね、でも何ていうのかな、」
 今し方自らが発言した言葉を反芻しているのだろうか。私の手元に自らの小さな手を添えながら、暫し黙考したのちに続きを述べる。
「メルルちゃんの手がどうとかこうとかじゃなくて、メルルちゃんにそうされてるんだって思うと、何かね。触られてるところじゃないところまでこう、カーってなっちゃうの。どうしてだろ、ふにゃふにゃってなっちゃって、こういうのは、えっと……」
「気持ちいい?」
 いよいよ語彙に困ってしまった様子のロロナちゃんにもう十分かなと、私は助け舟を出す。それが全てという訳でもなく、あるいは私はこの行為がそういうものなのだと先を誘導したかっただけなのかもしれないけれども。
「……うん。きもちー。メルルちゃんって、すごくきもちー」
 蕩けそうな微笑みにて。ああもう、ロロナちゃんと来たらこれだ。こんな顔をされちゃ、私がどうにかなってしまうのも仕方がないことのように思えてしまう。
「段々、悪いのが溶けて来たんだね。じゃあ、もっとやってあげるね」
「うん……あとね、メルルちゃん」
「ん?」
「んー……」
 うしろから抱き抱えるようにしている私に対して大きく首を捻っては瞳を閉じて口元を寄せて来るロロナちゃんの、それは実に可愛らしいおねだりであった。せがまれる私に断る術などあるはずもなく、
「ん……」
 その、小さくて愛らしい唇に私のものを重ねる。柔らかくてぷにぷにしているのだけれども、しっかりとした芯が一つ入っているかのように型崩れなど起こしはしない。夜は食後にミルクパイを食べたものだから、ほんのりと甘いミルクの味もする。何だろうか、何もかもが極上と感じる。
 触れて、舐めて、味わって。そうやって暫しの間をロロナちゃんの感触で陶酔していたらば、それでもやがて離れの時が来る。その瞬間は異様なまでに名残惜しく、ロロナちゃんが私をどうしたいだとかそういう話ではない。私がロロナちゃんのことをほしくて堪らない。
「へへ……メルルちゃんとちゅーするとね、ロロナすっごく幸せな気持ちになるんだ。メルルちゃんがすぐ目の前にいて、頭の中がメルルちゃんのことで一杯になっちゃって、もうね、全部が全部メルルちゃんだけになっちゃうの」
 口元を隠しながら照れ臭そうに零すロロナちゃんのあどけない笑顔にやられた私は、まさに今のことなのだ。歯止めなど掛けられたものではない。
「ロロナちゃん、もう一回……」
「うん……ふふ。一杯して、メルルちゃん」
 いわれるまでもなかった。薄目にて私を迎えるロロナちゃんを、私にしても閉じることなく致す。まさに至近距離で見合う私とロロナちゃんは視線と、それと口元とを深く絡ませながらお互いの感触を存分に味わうようにするんだ。
 艶の乗った睫毛の一つ一つですら数えられてしまいそうな程の至近にて、ロロナちゃんの目元が妖しく潤みを湛える。悲観から来るそれとは全く異なる類の水分は、元より浮世離れの感が付き纏うロロナちゃんの風をより一層強く彩っては、まるでこの世に、私が触れられる位置にいることそれ自体が間違いであるかのような存在感さえも帯びる。
 ――そう、まるで天使のようだ。そんな頭の中が茹だってしまったかのような発想も、しかしロロナちゃんに当てはめるのかと思うと何ら不自然がない。それ程までに私にとっての彼女は格外たらしく、また、特別な存在であるのだと嫌でも認識させられてしまう。
「んっ……ふ!」
 だからなのだろうか、考える前に身体が動いてしまった。そういうことをするのだという、知識でしか持ち合わせのない私ではあるのだけれども、果たして正解であったようだ。
 ロロナちゃんが呼吸をしようと、口元を少し大きめに開いたその瞬間に差し込んだ私の舌は間違いなくその口元に潜り込むことに成功し、程なくして彼女の舌と絡み合うことを始める。
 吸うはずであった酸素のほとんどを取り込むことも出来ず、加えて口の中に今まで咥えたこともないような異物の侵入を許してしまったロロナちゃんは、暫しを私に為されるがままとなる。まるきりが予想外だといわんばかりに混乱を孕んだ、そういう表情も実に愛らしい。
 それでも、初端からあまりいじめすぎて行為自体を敬遠されてしまっては元も子もない。私はロロナちゃんがいじけてしまわないよう、頃合いを見計らっては自分でも実にあっさりとした引き際にてロロナちゃんの内を脱する。
「ん、ふぅ……」
 それでも、何もかもを離してしまうこともない。私は顔元の距離が離れないようにとロロナちゃんの頬へ手を添えては、その口元をぺろぺろと、子犬がそうする時のような仕草を思い浮かべながら自らの行動にトレースを試みる。受けるロロナちゃんにしてもやがて破顔にて、口を開く。
「ふはっ……メルルちゃん、それ、くすぐったいよ」
 そんなに可愛い声で咎められたとして止められたものではない。聞かん振りを気取っては愛玩動物を演じ続ける私にロロナちゃんも何を思ったのか、
「もう……ロロナもやる!」
 両手でして頬を押さえ込んではお返しとばかりに私の唇をぺろぺろとやり始めるのだ。その様たるや私がやるよりもより元来らしく、ともすれば精も根も持っていかれてしまいそうな程の無邪気な魅力に満ちていて、私をより一層の深みへと誘っては止まない。
 それも、私が先程からしているところへとロロナちゃんも重ねるものだから、必然と双方の舌先は重なるようになる。唇とはまた違った湿り気と、ざらりとした質感を纏ったそれは私の興味を引くには十分な程の効果があり、またそれは彼女にしても同様のようであった。
 これはしていいことなのだろうかと、そのような目先で私を見遣るロロナちゃんへと私は態度で以て返すこととする。伸ばされたままでいたロロナちゃんの舌を唇ごと捉えては私の口内に誘い込み、嬲るように舐め、転がし、擦り付ける。ロロナちゃんにしても順応をしてきたようで、私の中で私を味わうかのようにじっくりと舌先を動かし始める。これはとても、堪らない。
 いつの間にか身体からして振り返っていたロロナちゃんに押されては、まるで押し倒されたかのような体勢で私は横になる。私の上になるロロナちゃんはとても軽く、お腹に乗る股の感触は私の冷静さをことごとく奪い取ってゆき、追い打ちとばかりに重ね合わされた口元からは抗い難い触覚が絶えず送られ続けてくる。というよりも、何だ、これではいけない。
「ロ、ロロナちゃん、ちょっと」
 うしろに手を着いてはそれを基点に半身を起こし、止むことのないロロナちゃんからのキスの雨を半ば無理矢理に剥がす。そのままでいては私が彼女に陥落するのも時間の問題であった気がしてならず、こんな幼子に対してだ。流石にそれはどうかと思うんだ。
「むー……もう、いいところだったのに」
 ロロナちゃんにしても何かしら手応えのようなものを感じていたのかもしれない。錬金術に秀でる者は万事に対する応用力も備わるのだろうか。誠以て恐ろしい才能である。
 ともあれ不満気なロロナちゃんをそのままにしてはおけないだろう。私は、あの時の続きというやつをするべきなのは、今まさにこの頃合いであると感じていた。
「うっ、ひゃっ!?」
 直前までの不機嫌顔も途端に霧散するロロナちゃんは、しかしそれも仕方のないことなのかもしれない。予告もなしに身体の真ん中へと触られた彼女は、文句をいうだとかそんな暇も在らず、ただひたすらに私から与えられる刺激へと戸惑うことしか敵わないようであって、また、これこそが私が求めていたパワーバランスなのである。
「メルルちゃん……これ、なあに? ロロナこんなの知らないよぉ……」
 困惑するロロナちゃんが、それでも痛がってはいないことを慎重に確認しながら私は手を動かし続ける。下から上へと優しく撫でるように手元を反復させては、ロロナちゃんの顔も段々と蕩けていき、その肢体からも力が抜けていく。
「痛くない?」
 その感覚だけに気を向けていいんだよと、私はロロナちゃんの背中を抱き寄せては脱力のあまりに転倒してしまわないようにしっかりと押さえ込む。逆にいうなれば、ロロナちゃんからしてはいよいよ身動きをするための余地すらを剥奪され、ただひたすらに私に股を弄られ続ける他にないんだ。
「う、ん……痛くない。痛くないけど変な感じ。くすぐったいのとも、ちょっと違っう……」
 喋る間も悪戯を続ける私に対して、喉をひくつかせながらもそれでもとつとつと語るロロナちゃんへ、いよいよを以て私は興が乗って来てしまったようだった。
「ロロナちゃん、ちょっとだけ横になろうね」
 背中を支えていた方の腕をゆっくりと地面側にシフトさせてはロロナちゃんを仰向けに寝かし付け、そうしてから私はその唇に一つ触れるだけの挨拶をする。
 しかし、こうして私よりも一回りも二回りも小さな体付きをした子を浴場で押し倒しては覆い被さり、そうして下方から次は何をされてしまうのかといった態で視線を寄越すのはロロナちゃんなのだ。この状況を自ら改めて認めてみるとしかし尋常じゃないものだ。どうしてこうなってしまったのかと少々の自戒をするものの、しかし目の前で横になる彼女を自由にする権利というやつが今この私の腕の中には存在するのかと思うと、これがまた背徳的というのか、何というのか。私の中にこんな感じ方があっただなんて、事が進む毎に私は自分というやつが分からなくなってしまいそうだ。
 相反する理非曲直が真正面からぶつかっては胸の内に嵐を起こし、心拍は跳ね上がり、喉はカラカラに干上がってしまう。これはもうダメだ。私の手には余ってしまって、どうにもならない。
「ロロナちゃん……」
 何をいうべきかと言葉を迷っていた私へと、しかしロロナちゃんが先を次ぐ。
「ん……いいよ、メルルちゃん。もっと何か、あるんだよね? ロロナは大丈夫だから。えへへ……ロロナの知らないこと、たくさん教えてね」
 恐怖心がないというと嘘になってしまうのだろう。抑え切れない未知への恐怖を、それでも私に対する信頼で抑え込んでいるのかと思うと胸が熱くなってしまう。本当に、私なんてそんな、ロロナちゃんには勿体ないくらいなのに。
「イヤだったらいってね? すぐに止めるから」
「ん……わかったよ」
 念を押す私へと、既に覚悟は決まっているのだろうか。両手を胸の前で組んではじっと私を見据えて待ち望むロロナちゃんへと、私は何かとても悪いことをするような、その純な面に良心を灼かれるような心象で以てして、再びそこへと手を付ける。
「ふっ……」
 びくりと身体を震わせては息を漏らすロロナちゃん。もう、ここまで至ってはもはや私に中断という選択肢はあったものではなかった。より徹底的に取り掛かるために、彼女の顔元へと寄せていた顔をそちら側へと移す。
 初めて見た時から今に至るまで、ロロナちゃんのそこはぴっちりと閉じられたままになっており、あたかも決して侵すことのならない聖域か何かであるようなそんな印象さえ受けてしまう――というよりも事実そうなのだろう。少なくとも私のような年長者が私利私欲のために拓くだなんていうのはもっての他な場所に違いない。違いはないのだけれども、事態はもはや歯止めの利かないところにまで進行してしまっている。私は既にその気で、その気の私が手を、あるいは指を、ほんの少々動かすだけでそこを自由に出来てしまうのだ。手を出さない道理なんてものは、もうないのだ。
 いよいよ私は、両側に添えた指をゆっくりゆっくりと左右に割り開くようにする。どうにも自分とは勝手の違うそこはなかなか内側を見せてくれようとはせず、それでも愚直に繰り返していたらばやがて肌色の丘が割れ、その奥から控え目なロロナちゃんの中身が姿を現す。
「わっ、わ……」
 それを目の前にした私は、もはや感動すらを覚えるような態であった。天辺には身を隠す豆のようなものがあって、その下にはあるのかないのかすら分からないような小さな穴が二つ。血色よく鮮やかなピンク色に染められた粘膜は瑞々しさと生物元来の生々しさとを同居させており、いや、とにかくすごい。いいのだろうか。これは、私如きが見てもいいものなのだろうか。
「メルルちゃん、どうしたの? ロロナのそこ、何か変……?」
 込み上がる感情を超越してはもはや怯みの域へと達する私へと、ロロナちゃんが不安げな様子で声を掛けてくる。互いに未経験の分野であるとはいえ、先導者である私がこんな状況では彼女のような幼子が恐れてしまうのも当然のことで、いけない。私はもっとしゃっきりとしていなくてはいけない。
「ううん。あんまり綺麗だから、びっくりしちゃったの。ごめんね、驚かせちゃって」
 そうだ、もっと素直に。あるものをあるがままに見て、感じて、いえばいいのだ。こんなにいいものが目の前にあるんだ。悪いことなんて何一つない。
「そ、そうなんだ……何だか恥ずかしいな」
 そうして口元に手を添えては恥じらいを見せるロロナちゃんに、しかし私もいよいよ限界である。
「触ってもいい?」
「ん……もう何も分かんないから。全部メルルちゃんの好きにしていいよ」
 全く以て先程からのロロナちゃんの発言、そのことごとくが私を篭絡させようと綿密に計算されたものではないのかと疑ってしまう程に全てが的確で、仮にもしそのような意図があったのだとしたらば、既に私は術中へと陥ってしまっているに違いない。
 とにかくもうダメだ。難しくなんか考えられない。目の前のロロナちゃんを堪能することだけにこの頭と身体を使うこととする。
「ひゃっ……ん!」
 まず私は、そこへ舌を這わせることにした。あの時と同じように――といっても、ロロナちゃんは既に身体を洗ったばかりなのであり、今度こそ私は他意など全くあったものではない。私はただ彼女の身体に触れるその一点のため、そのためだけに行動を起こしているのだ。
 更に加えるならば前は外側との接触に終始していた私なのだけれども、今やその割れ目をすっかりと割り開き、外気と私との接触に震えるロロナちゃんの内側へと攻め入っている。今日は、綺麗にしていたものだから周りはそうでもなかったのだけれども、この中身に関してはまるであの日のような味覚と嗅覚とを私に訴えかけて来る。ロロナちゃん自身の香りと味に、私はどうにもならずくらりとしてしまうんだ。
「うっ……ふ」
 指先を唇で挟み込むようにしながら、果たして発声を耐え忍んでいるのだろうか。私が舌先を動かす度にロロナちゃんの腹筋とそのか細い喉とが震え、霞む声を漏らす彼女の様子がまた私の行動へとより一層の興を乗せる。可愛いくて仕方がない。
 しかしこれは、おしっこのそれなのだろうか。少ししょっぱいような苦いような味のするそこを、私はまるで汚れを落とすかのような気でして上から下までを丁寧に舐め上げるのだけれども、舌を通じて脳へと送られて来る、今まで味わって来たどんな味覚にも似通うことのないこの味は、世界で唯一私だけが感じることの出来るロロナちゃんのものなのであって、それも今この時に至るまで他の誰もが、この私ですら手を付けたことのない領域なのである。
 今この瞬間の私は非常に貴重な機会に取り掛かっており、私はそれを自覚しながら漏らすことなく、ロロナちゃんの端から端までを徹底的に味わい尽くさなくてはならない。そうでなくては、次からは何か状況が変わってしまうかもしれないではないか。ロロナちゃんのはじめてというものは今この時以外に起こり得ることはなく、それ故の稀覯なのである。手抜かりなど許容されたものではない。
「うぁ……メルルちゃん、何だかいつもと違う……」
 貫徹を気取る私の気迫が果たしてロロナちゃんにさえ通じてしまったのかもしれない。身体を震わせながら、それでも腰元からをがっちりと私に抑えられてしまっている彼女が逃げることは敵わない。誠以て申し訳ないことだが、ロロナちゃんはこのままここで、それこそ私が飽きるその時までその身を弄られ続けなくてはならないのだ。
「な、なんだろこれ……おしっことは違うんだけど……ロロナわかんないよう」
 口は休めることなく目元だけを上に向かせると、半ば涙目になってしまったロロナちゃんは未知の感覚との遭遇に大層戸惑っている様子であった。果たして、呼応しては少し舌先に乗る質感も変わってきたような気がしたのだけれども、どれ、一つ試してみよう。
「ふ……あっ!?」
 下端に近い方の窮屈に、私は舌先を捩じ込むようにする。入り掛けの抵抗たるや凄まじいものがあるものの、唾液を丹念に塗り込んではじわり、じわりと掘り進めていく。どうやら、いけそうである。
「だ、ダメ、メルルちゃん、それダメだよっ!」
 仮にそれが痛覚から来るものであるならば私には普く退く準備があるものだけれども、今のロロナちゃんの様子を見る分にはその限りではない。きっと彼女は戸惑っているに違いないのだ。まさにそれを教えるための今なのであって、大丈夫なんだ、ロロナちゃん。ちょっとずつ慣れていけばいいんだよ。
 そうやって聞く耳を持たずに私が発掘を続けていたらば、しかしピンと張り詰めていたロロナちゃんの四肢は途端に脱力へと至り、
「あ……もう、ダメ。メルル、ちゃ……ごめんなさ……」
 私が何事かと思ったその瞬間には、それは既に吹き出していた。にわかには事態の把握というやつが出来ない私ではあったのだけれども、それでもやがて思い至る。私は、認識を違えていたのだ。
 変化は、倦怠と痙攣とに包まれるロロナちゃんの、私が弄っていた側とは違う方に起こっていた。てっきり私は実際に刺激をされているこちらこそがロロナちゃんの危惧するところなのかと思っていたのだが、しかしよくよく考えてみればそうである。慣れない刺激に曝されて、自分でも訳が分からなくなってしまって加減が利かなくなってしまったのだろう。勿論、それを私へと伝える術などあったものではない。私自身が斯様な道を塞き止めていたといっても過言ではないのだから。
 ともあれ、おもらしであった。ロロナちゃんの幼い膣口に舌先を突っ込んだままでいる私の口元から鼻先に掛けて、それはあとからあとからと容赦なく浴びせ掛けられる。
 果たしてどのような具合でいるのだろうかと、ふと視線だけを上に向けると大層満足気な――恍惚というものはまさしく今のロロナちゃんのような顔を指すに違いない――表情でしきりに溜息を漏らす彼女の顔があり、どうやら上の方も下の方もすっかりと気が緩んでしまっている様子であった。
 その、私が初めて見ることとなるロロナちゃんの痴態というやつをただの一刻でさえ逃さぬよう、心のフレームに焼き付ける作業を継続して行いつつ、絶えず放出を続けるロロナちゃんのおしっこの感触にしてもおろそかにすることのないよう、刹那的な心境で以て気を向けることとする。
 しかしどうしてだろうか。この私、メルルリンス・レーデ・アールズにしては、そのような安っぽいプライドを持ったり鼻に掛けたりしたことは今の今まで一度もないと誓ってもいいものだが、しかし仮にも一国の姫でもある私がまさか顔面に尿を掛けられているのかと思うと、先程からどうにもダメだ。胸の奥からゾクゾクと感じ入るものがあるのだ。
 だってそんな、ありえないでしょうこんな。少なくとも私が今まで私の人生というやつを生きてきて、まさか今のように真正面からおもらしを受ける瞬間が訪れようだなんてそんな奇天烈な発想をすることは不可能であったし、それも希望的観測だとかそういう類の簡易から因るものでも非ず、一般的な観点からすれば至極真っ当な先見性であると感じる。
 加えるならば、普通にしていればそのような汚らわしいものなのだ。まるでいきなり唾を吐かれるだとか、そのような世界でのお話となる。憤りこそせど、心穏やかに受け入れられることだなんてまずありはしないはずだというのに。
 それでも、そんな汚物を今や私曰くところ実に心穏やかな心境にて受け入れられているのはどうしてだろうかと自問するものだけれども、いやなに、単純だ。全部が全部ロロナちゃんのせいなのだ。通常であれば耐え難い屈辱も、こんな可愛らしい幼女にやられているのかと思うと、感動――そう、感動だ。誠以て感動も一入なのである。
 よく分かりもしないロロナちゃんに悪戯を繰り返して、やはり加減も何も分かったものでもない彼女は上手くコントロールをする術を失ってしまった。何もかもが異常なこの光景の中で、私はひたすらロロナちゃんの未熟に妙趣を感じ入ってはこの身と心を震わせて。しかし何だろうか、まとめてしまってはまるで私はアブノーマルではないか。そもそもロロナちゃんのような子に対して事を始めてしまった時点でも既に問題だというのに、次第がここまで至ってしまってはそれを嫌がりもせずに楽しんでいる私というのは、つまり根がそういう形を作っているということなのだろうか?
 あちらこちらと右往左往、理由をほしがってはぐだぐだと余計を考えはするものの、結局のところ一次的な善し悪しの判断というものはそれぞれの人の中にある何か根本的な感覚に則ってやられているようなものだと思う私で、例えばネギが嫌いだという人もいれば、ネギは大好物だけれどもレンコンだけは勘弁してほしいっていう人もいる。しかしそのいずれの場合においても両者に非というものはないのだ。
 勿論、そうやって簡単に割り切れはしないものがこの世の中には沢山あることを先に断っておきつつも、人の選り好みというものは基本的に起因など持たないようなところから成るものなのであって、すなわち突き詰めればシンプルに好きか、嫌いか、そのいずれかなのだ。そこに基となる理由を差し挟む余地などあったものではなく、だからこそ至って分かりやすく、また簡単には曲げられない故に厄介なファクターでもあるのだと私は考える。
 そしてつまりは、私についてはそういうことになるのだろうか。新たな自分の一面、その発見について戸惑いと悦びとを同時に味わっては頭を悩ませるのだけれども、しかしそんなことなどお構いなしといわんばかりにロロナちゃんの放出は止む気配を見せない。
 小さな出口をパクパクとさせながら、一度その口が窄まったあとに開いた瞬間の勢いが最も強いのだなあとか、お腹の上下に併せて微妙に流れが強くなったり弱くなったりするのだなあとか、自分のものにしてもこんな近場でその瞬間というものを観察したことのない私は、斯様な仕組みの一つ一つにいたく感銘を受け、また同時に興奮を覚える。放出の中心となるそこに連動しては突き込んだままの私の舌先を健気に締め上げる感触も心地がいい。
「ふぁ……あ……」
 それでも、始まりがあれば終わりもまた訪れるようだった。ロロナちゃんが一つ大きな息を漏らすのに併せて最後の高波が押し寄せては、それも次第に勢いを弱め、終いには局部全体を弛緩させたのちに締めの感触も元通りとなる。実際の程は定かではないけれども、随分と長い時間を掛けての用足しだったように感じる。
「ぐす……ふぇっ」
 そして、終わりが訪れればまた新たな始まりが始まるのだろうか。いや大層にかっこつけないい回しをしてしまったけども、予兆を感じ取った私はどうにも動揺をしていたのかもしれない。
「うぇ、えぇぇぇぇぇぇぇぇん」
「あああ、ロロナちゃん、泣かないで。ロロナちゃんは強い子だから、ねっ!」
 ぐずり出した彼女に対してこうしてはいられないと、とりあえず口元を現場から離しては手桶にて軽く顔を流して磨いて、改めてロロナちゃんの方へと取り掛かる。両手を目元に擦りつけてはわんわんと大声を上げて泣くものだからこれではあとで目が腫れてしまうのもそうだし、そもそも異常を察したケイナやら城の人たちがここに駆けつけて来かねない。
「ごめんね」
 強引を感じつつも、私はロロナちゃんの両腕を体格差にものをいわせた腕力で取り上げ、邪魔をされたといわんばかりに不満そうに目を開いては大きく息を吸い込もうとするロロナちゃんの口元に、やはり強引な口付けを施す。
「ん、むっ、んーーっ!」
 急に呼吸を塞き止められては苦しそうな声を漏らす彼女に、しかし構っていられたものではない。私はロロナちゃんの自由を剥奪するための、そういう意図で以てして強引に舌を突き込む。
「ひぇ、ひゅ……ひゅ、ひゃ……」
 私の名前を呼ぼうとしているのだろうか。目元から雫を零しながらも訴えかけて来るような気勢はしかし抗議や抵抗だとかそういう類のものでは非ず、次第に私を求めるためのそれに取って代わっているような具合に映る。
 いずれにせよ私はロロナちゃんの暴れん坊がすっかりと落ち着くまで、彼女を満遍なく荒らすことへと注力するのだ。腕を強引に取り。唇を押し付けて、緩めて、舐めて、吸って、甘く噛んで。そうしてやがて、頃合いを感じた私はようやくの解放を許す。
「あ、はぁっ……」
 酸欠で頭の中がくらくらとしているのかもしれない。先にも増してとろみを増したロロナちゃんの頭を優しく撫でながら私は諭すように告げる。
「落ち着いたかな?」
「う、うぇっ……ロロナ……メルルちゃんのお顔におしっこ掛けちゃって、ロロナ……」
「大丈夫。大丈夫だから。気にしないで。ね?」
「だって……ばっちいよお。それなのにロロナ……メルルちゃん、ごめんなさい」
「ああもう……さっきいってあげたよね? 私がロロナちゃんの中の悪いものを治してあげるんだって。だから、いいんだよ。他の人にはしちゃダメだけど、私にはいいんだよ……ほら」
 胸元に抱き込んでは涙を舐め取ってあげ、その小さな頭を大事に大事に撫で摩ってやる。
「それにさっきの、ロロナちゃんは気持ち悪かった? さっぱりしなかった?」
「わ、わかんないよ。そんな、ロロナよくわかんない……けど、なんか」
「なんか?」
「メルルちゃんにはごめんなさいだけど、何だかロロナ、ふわーってしちゃって、あれって……」
 至近の、真正面から見遣るロロナちゃんの顔はもう真っ赤で、そんな彼女は恥ずかしそうについと横へ目を流しながら、
「きもちよかった……のかもしれない、って、ひゃっ!」
 その面と告白を見、胸の中を何か温かいもので一杯に満たされたような気持ちになった私は、もうこうなっては何もかもを抑えられたものではなかったんだ。
「メルルちゃん……ダメだよそんな。ロロナ、おっぱいなんて出ないよぅ……」
 そんなこと分からないじゃないか。もしかしたら私がこうやってしつこく弄り続けていたらパイのように甘い、ロロナちゃんのミルクが出てくるかもしれない。
「ひゃっ! またそうやってお股弄るぅ……」
 だって仕方ないじゃないか。ロロナちゃんのここは私が触れたことのあるどんなものの感触にも似付かず、柔らかくて、あったかくて、ぬるぬるで。これを好きに出来る権利というやつが私にあるのかと思うと、とても行使せずにだなんていられないのだから。
「ダメ? ロロナちゃんはここは気持ちよくない?」
「わっかん……ない……けど、たぶん、きもちー。きもちーんだけど……」
「またおもらししちゃいそうで、怖い?」
 片手はロロナちゃんの真ん中に、片手は小さな胸元の先っちょを捏ね回し続ける私へと、息も絶え絶えといった態のロロナちゃんは恥ずかしそうに首肯をして返す。
「そっか」
 それを認めた私は胸へと向けていた片手と顔と、それら全てをロロナちゃんの腰元に向かわせる。あまり長湯をしてはケイナが来てしまうかもしれないし、ぼちぼち今日はこの辺にしておかなくてはならないだろう。
 これからの一幕を本日の終焉と定めた私は、もはや遠慮などすることはない。私の頭が発想出来ること全てを、目の前のロロナちゃんに施してあげることとする。
 右手の人差指は窮屈な穴に挿し込んで、左手は天辺のフードを上側に向かって押さえながら、舌でして下から上へと捲り上げるように何度も何度も往復させるようにする。痛くしてはいけない。逸る気持ちを抑えながら、それら全ての運指を優しくなぞるように何度も何度も繰り返す。微弱な刺激の総力は反復回数でして補えばいいのだ。
「あっ……ひゃっ……」
 被りを捲られては段々と中のつぼみが顔を出して来、併せて内側を縦横無尽に掘られるその度にロロナちゃんは腰を跳ねさせる。局所に関しての目的達成を感じた私はロロナちゃんが腰を引けないよう、左腕を派遣してはがっちりと腰裏に回し引き寄せ、拘束する。
「んー……!」
 私は、おしっこの穴から今し方顔を見せたばかりのお豆さんの辺りまでを繰り返し舐めしゃぶるようにする。そこは、先程漏らしたその味なんだろうか。酸味というかしょっぱさというか、何ともいえない味覚の変化を訴えて来るのだけれども、これがロロナちゃんが体内から分泌したものの味なのかと思うと、比喩でも何でもなく身が震えてしまう程の興奮を覚える。美味しい。
「メルル、ひゃっ……つよっ……それ強いよう!」
 かつてなかったであろう程の性感の波に襲われているロロナちゃんはもはや半狂乱といった態で、いつの間にか起こしていた半身でして私の頭部を抱き抱えながらメルル、メルルと、私の名前をうわ言のように繰り返すのだ。激しく頭を振りながらも決して私の行為を咎めようとすることはなく、むしろ一層の強さでして私を求めてくれるその姿勢に、私の方も身体が熱くなって来るかのようだ。
「あ……また? ロロナまたおもらししちゃってるの? ごめんなさい……メルルちゃん、ごめんなさい……」
 自分でもとても上品とはいえないような音を立ててロロナちゃんの分泌した汁を啜る私だったのだけれども、彼女からするとその液的な音質がまた自らの粗相であったかのように捉えてしまっていたようだった。私の頭に自らの頬を擦りつけながらしきりに懺悔を繰り返すその様に私の内の熱は一層の高騰を果たす。
「うぁ……でもロロナ、わかったよこれ……きもちーんっ……だ。メルルちゃんに、お股ペロペロされて、ロロナ、きもちーんだ……」
 この状況について何か一つ悟りに至ったらしいロロナちゃんは、自らでして自身に起きている感触、その状況を繰り返し口にすることで一歩先に進んだ感性へと己を導いているのかもしれない。
 ひたすらにメルルちゃん、ロロナ、気持ちいい、の三つを連結しては口から零すその度に私の右手はロロナちゃんから溢れる液で濡れ、そのぬめりに乗じてはより一層の刺激を与えんと私は指先でして強く致す。ロロナちゃんにしても痛いということはないようで、巡りが更なる巡りを呼ぶような循環へと、どうやら私たちは至ってしまったらしい。
「メルルちゃ……はっ……メゥ、ル、ちゃ……ん」
 限りなく膨張を続ける行為はもはやロロナちゃんが果てる他に止める術は在らず、そしてどうやらその終わりというやつもいよいよを以て近付いて来ているようであった。
「メルルちゃん……ロロナ……ロロ、ナッ……」
 全身でして私の頭を抱き込むようにするロロナちゃんの身体はもはや痙攣に歯止めが掛からぬ様子で、きつく強張った足の指先も、ふるふると震える背筋の感触も、そのどれもかもが彼女の限界を私へと切に訴えていた。
 だから、私は。
「――――ッ!!!!」
 彼女を楽にしてあげようと。その一心でして、カリ、と、豆の真ん中を甘く一噛みしたんだ。
 その刹那、私の意図した通りにロロナちゃんの感覚は天辺へと達し、そして、釣られるかのように漏らしていた。


「メールールーちゃーん、あそぼー!」

 これからの話をしようと思う。
 件の過程以降、ロロナちゃんは以前にしても十分な程だったというのに、輪を掛けて私へと懐いて来るようになっていた。
「ロロナ先生、こんにちは」
「トトリちゃんこんにちはー! メルルちゃんはまたぐーるぐーる?」
「そうだよー。もうちょっとで終わるから、いい子にして待っててね」
「うん、分かった。ロロナいーこだから座って待ってるね!」
 そうして持参した画用紙にクレヨンを広げてはソファーの一角を陣取ってお絵描きを始めるロロナちゃん。
「レンコンと錬金はよく似てるけど違うもの~ ロロナ メルルちゃんだいすっき~♪」
 いつものように自身が作曲・編曲クレジットのロロナオリジナルソングを展開しながら創作を始める彼女は、しかし歌を口ずさむその度に歌詞が微妙にアレンジされているのだ。今日の締めはメルルちゃん大好きであるらしく、この前は仲良しだとかその程度の言葉選びで落ち着いていたものだと思うのだけれども、この調子では明日以降のパフォーマンスを聞くのが怖いような嬉しいような、複雑な心地になってしまって仕方がない。
「はあ……メルルちゃんいいなあ。私もロロナ先生ともっと仲良くなりたいのに、どうしてメルルちゃんだけに懐いちゃうんだろ」
「あ、あはは……どうしてでしょうねえ」
 無邪気にカオスな世界を描き続けるロロナちゃんと私とを見比べながら、割と本気な視線にして物欲し気な溜息を漏らすトトリ先生へと、しかしどうして私がロロナちゃんとここまで親密になったのか、まさかその始終をお話する訳にはいかない。
「ねえねえ、ロロナ先生。たまには私とも遊んでくれないですか?」
 私が些事を気取るその様を釜の内の佳境と汲んでくれたのだろうか。それ以上追求して来ることもなく、トトリ先生のターゲットはロロナちゃんの方へと切り替わったようだった。しゃがみ込んでは目線をロロナちゃんの顔元へと合わせ、努めて優しく語り掛けるその内は、しかし穏やかを装う外見とは違い必死そのものであると感じる。
「ん……ロロナ、トトリちゃんともいつも遊んでるよね? どうしたの?」
 それでも、さも意外だといわんばかりの表情で応じるロロナちゃんにトトリ先生はたじたじである。そう、そういう手は通じないんだ、この子には。
「あ、何ていうか、私とも遊んでくれるけど最近はメルルちゃんのことばっかりだなー、とか、ちょっとだけ寂しいなー、とか」
 しどろもどろに応じるトトリ先生へとロロナちゃんは破顔にて「へんなトトリちゃん」と付し、クレヨンを持っている方とは別の手で優しく頭を撫で付ける。ロロナちゃん特有の無邪気に当てられてしまったトトリ先生はすっかりと戦意を喪失しまったようで、これを出されてしまってはもはや遣り様がないことだろう。
 ともあれ二人がちぐはぐと的を得ないやり取りを展開している内にも、さて、もう一つ二つぐーるぐーるして。
「できたあ!」
 依頼品の、魔法の絵の具の完成である。高品質な素材を選択して調合したものだから出来栄えの方も問題がないことだろう。依頼主にしてもきっと満足をしてくれるに違いない。
「メルルちゃん、終わりー?」
 完成したばかりの絵の具をメルル印の紙袋に収めては納品の用意をしている私へと、終了の気配を感じ取ったロロナちゃんがいち早く駆け付けて来る。今までトトリ先生とお話をしていたのでは、と思っていた私は念の為にそちらを振り返ってみると、ああ、やっぱり。今にも泣いてしまいそうな顔をした先生がそこにおり、それにしても、そんな恨めしそうな目で見つめられても。私にはどうしようもないことじゃあないですか。
「うん、今日の分はこれで終わりだよ」
 ともあれ先生に関しては気が付かなかった振りを気取ってロロナちゃんへと応じることとした。傍からの視線がとても痛く感じるけれども、気にしたら負けなのである。
「えへへー、じゃあさ、じゃあさ。今日はロロナにご本読んで! ちゃんとあれだよ? ロロナのことだっこしながらだよ?」
「はいはい。そうだよね。昨日約束したもんね」
「うん。やくそくー」
 腰を折っては目線の高さにて応じる私へ、にこー、としながら首元へ抱きついてくるロロナちゃん。私も大分慣れたもので、そのお尻と脇の下に腕を通しては気勢を一つ入れて持ち上げる。いわゆるお姫様だっこというやつだ。
「っひゃー!」
 大層ご機嫌な様子で私へと頬ずりを仕掛けるロロナちゃんのこそばゆさと来たら。私が思わず相好を崩してしまうのも無理はないといったものだ。
「メルルちゃん、いいなぁ……」
「今はほら、こんなですから。トトリ先生にもあとからお願いしますよ」
 投げ遣りなトトリ先生へと応じつつ、ソファーへと腰掛けながら膝の上にロロナちゃんを乗せて。御行儀よく帽子を脱いでは私の胸元へと背中を預けるロロナちゃんからはふんわりとお日様のような匂いが立ち上るのだけれども、私にしてもうしろからこうやってロロナちゃんを抱き込むような体勢は大好きなのである。小さくて、柔らかくて、いい匂いのするこの子をぎゅってしてやると、とても幸せな気持ちになるんだ。
「ねえねえ、メルルちゃん、今日はこれ読んで? お姫様のお話のやつ!」
「またこの絵本? いいけど、ロロナちゃんって本当にこれが好きなんだね」
 振り返っては私へと本を差し出すロロナちゃんが手にしていたのは、箱入りで育てられたお姫様が城を飛び出し自分の足で世界を旅し、様々な冒険をしていくという、その手のジャンルとしてはちょっと風変わりな作品なのだ。タイトルは『Princess Brave』というのだけれども、しかし私が覚えている限りでもこの数日の内で三度目のリクエストである。飽きはしないものなのだろうか。
「うんとね、他の絵本だとお姫様って、王子様と結婚してね、すえながくしあわせに暮らしました、めでたしめでたしってなっちゃうんだけどね、ロロナそういうのあんまり好きじゃないんだ。メルルちゃんはそんなことないよね? 王子様なんかいなくて、ずっとロロナと一緒にいてくれるよね?」
 私の袖を引っ張っては懇願をするロロナちゃんの表情には冗談など非ず、真剣そのものである。子供のいうことだと、そうやって軽くあしらうことは出来るのだけれども、私はこの手のやり取り関してはきちんと接してあげることに決めているのだ。
「うん。ロロナちゃんを一人ぼっちにして王子様といたりなんてしないよ。そもそも私に王子様なんてありえないしね。それよりもそうだ、ロロナちゃんが私のお姫様になればいいんだよ。それで、えーと……私もやっぱりお姫様でさ、毎日美味しいパイを食べたり、ゆっくりとお茶をしたり、お喋りしたり、寝る時はこうやってご本を読んであげたり……あれ、今とあんまり変わんないのかな」
「ロロナ、メルルちゃんと一緒にお姫様になるの? わあ、いいなあ、それ」
 うしろ半分にしては思いつきで述べたものだけれども、ロロナちゃんにしてもよい提案だったようだ。まさか本当にお姫様になれる訳ではないけれども、それでもこうやってその時ばかりのノリで流してしまうのもどうにも勿体ない念に駆られる。
「今度、ロロナちゃんのために私とお揃いのクラウンを作ってあげる。そうしたら今いったこと、一緒にやろうね」
「うん!」
 そこまで至っては落ち着いたようで、絵本の始まりを催促するロロナちゃんへと私もページを開いて応じる。完全に拗ねてしまったらしいトトリ先生はちらちらとこちらを伺いながらも錬金釜の方へと取り掛かっているようだった。
「むかしむかし、あるところに……」
 どうにも、何もかもが泰平であるかのように映るこの日常の、しかしその実はどうなっているのだろうか。きっと今は仲良しこよしの範疇で収まっている私とロロナちゃんは、しかしもしもこの場からトトリ先生がいなくなってしまってはきっとまた始めてしまうのだ。人様にはとても見せられない、聞かせられない類の交誼というやつを。
 自分事ながらもそれはとても歪な関係に思え、だからといってすぐには止めることもままならない。私はロロナちゃんを抱きしめることの心地よさというやつを知ってしまい、ロロナちゃんにしても私に依存することで得られる何か悦びのようなものを覚えてしまった。
 それには、お金も何も必要がない。ただただ時間と場所と、それに私たちの心と身体の都合さえついてしまえばいつでも始めることの出来るいけない遊びなのだ。気軽であるが故に手放し難いこの習慣と、果たして私はこれからどう付き合っていくべきなのだろうか。
 あれも分からないこれも分からないと、何もかもが不透明なままに迷走を続ける思惑の最中に、それでもやがてフィクションのお姫様のお話は終わりを迎えていたようで、
「めでたし、めでたし」
 理想の終末を紡ぐ私へとリアルのお姫様は満面の笑みで以て応じる。
「ありがと。えへへ、やっぱりメルルちゃん大好き」
 そうやって見上げながらの振り返り様に顔を近付けてくるロロナちゃんの意図はきっとその他には在らず、ああ、トトリ先生が見ているのに――そう思った時には既に静止も敵わず、彼女の小さな小さな唇が私のそれへと重ねられていた。
「え……ちょっとメルルちゃん、それって……わ、ひゃあっ!?」
 ロロナちゃんの頭越しに目が合っては逸らせない私とトトリ先生の顔が互いに真っ赤に染まり切りやがて沸点へ達する頃、釜の中身がボンと一つ小爆発を起こしては事象が事象を呼ぶ連鎖の段へとあっという間に事態は進行し、
「トトリ先生、あぶなっ……!」
 メルルのアトリエは、盛大に震えたのだった。




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